家庭医とスポーツドクター 濱井彩乃(亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科/森の里病院 内科) レジデントノート2016年1月号掲載 [SHARE] ツイート 皆さんは「スポーツドクター」と聞いて,どんなイメージを思い浮かべるでしょうか? やっぱりスポーツは整形外科でしょ,という声が聞こえてきそうです.私も以前はそう思っていましたが,実はそんなことはありません. 私は大学まで剣道をしており,何となく整形外科をめざした時期がありました.でも手術がしたかったわけではなく,家庭医という色んな患者さんのよろず相談にのる医師への憧れから,家庭医の道に進みました. 私が家庭医の研修をはじめた頃,「家庭医として」スポーツドクターをめざす先輩がいました.先輩の話では,アメリカでは整形外科医のスポーツ医学フェローシップと家庭医・小児科医のためのプライマリ・ケアスポーツ医学フェローシップがあるのだそうです.家庭医としてスポーツにかかわれることが嬉しく,その先輩の元で,地域で行われるトライアスロンの大会救護を手伝うようになりました. 大会救護では,整形外科的な怪我の対応ももちろん大事ですが,溺水・低体温・熱中症などの救急疾患への備えが必要です.また,基礎疾患をもつ人の参加をどうするか,安全な大会参加を促すために予防的にどんなアプローチが必要か,救護時にはどんな連絡経路でどう搬送するかなど,多角的なアプローチが必要です. また,縁あって全日本剣道連盟の強化合宿に帯同する医師の末席に加えていただき,世界剣道選手権大会に女子チームドクターとして帯同する機会をいただきました.トップアスリートでは怪我や痛みへの対応が大事ですし,選手もまずそれを求めてきます.しかし実は風邪や喘息,アレルギー疾患,皮膚や眼・耳のトラブルなどもとても多いです.無月経や貧血なども選手のパフォーマンスに直結する大事なことです.ドーピングの知識も大切です.信頼関係を築き,安心して気軽に相談してもらえるようになるには時間がかかりますが,よろず相談医である家庭医としてのスキルが役に立っています. 普段の外来では,さまざまなレベルのスポーツをする人たちがいます.高齢者やメタボ対策としての運動では,安全で効果的な運動という視点が大事ですし,成長期の子どもでは,体の成長・発達にあわせた障害予防の視点も大事です. このように,スポーツ医学には,多様な役割と活躍の場があり,家庭医との相性はとてもよいと感じています.ぜひ皆さんも一緒にスポーツ医学にかかわっていきませんか?