家庭医療の後期研修をのぞき見る 調 拓治(奈良市立月ヶ瀬診療所) レジデントノート2016年3月号掲載 [SHARE] ツイート 「家庭医って何ですか? どんなことをするんですか?」もしあなたが医学生に尋ねられたとき,はっきりと答えられるでしょうか? 自身は初期研修途中まで整形外科医をめざしていましたが,小児科の研修で疾患のみならず心理社会的にも広く診ることに感銘を覚え,人を幅広く診る家庭医へ進むことに決めました.その後,家庭医療後期研修を経て,地域医療の最前線である診療所で家庭医として働いています. めざす家庭医の姿 自身が属した地域医療振興協会の家庭医療後期研修プログラムは,「あらゆる問題に応じる医師」の育成をめざしています.これは完全な解決ができずとも,医師として責任をもった提案ができることを意味しています.プログラム修了時に病院,診療所,へき地,離島等のあらゆるフィールドで対応できる医師になることが目標です. 家庭医療後期研修プログラム 病院+診療所の家庭医と夜の学び in 奈良(左から2番目が筆者). 後期研修プログラムでは,総合診療Ⅰ(診療所で6カ月以上),総合診療Ⅱ(病院総合診療部門で6カ月以上),内科(6カ月),小児科(3カ月),救急(3カ月)を研修することが必須となっています.6カ月の選択研修があり,専攻医のニーズに応じて,さまざまな科を研修することができます.自身は,市立奈良病院で総合診療科(総合診療Ⅱ),内科,救急科,小児科を研修し,奈良市立都祁診療所(総合診療Ⅰ)などで9カ月研修しました.選択研修としては,整形外科とOregon Health&Science Universityのfamily medicineを選びました.さらにへき地勤務を見据えて,上部内視鏡検査,腹部超音波,心臓超音波を1人で施行できる程度まで病院で研修しました.研修のなかで,多くの家庭医が活躍している米国での研修は印象的であり,家庭医としてのアイデンティティ,診療技術など自身の診療に強く影響を受けました.また,知識や技術のトレーニングのみでは家庭医の根幹を成す部分は学べません.担当指導医との振り返り,web勉強会,インフォーマルな会を行って家庭医療の専門性,家庭医のプロフェッショナリズムを学んでいます. 研修後の先には 後期研修後の進路は,離島・へき地を含めた診療所,中小病院の内科・総合診療,大学病院の総合診療部,国内外のサブスペシャリティ研修(在宅医療・医学教育)など多岐にわたります.臓器別専門科でさらに学ぶ人もいます.研修で最も重要なのは,一定の質の高いトレーニングを受けて,家庭医としてのプロフェッショナリズムをもった医師になることです.そうすれば,「他の先生ではなく,先生に診てもらいたい」という患者さんがあなたの前に現れるでしょう.家庭医として,今後多くの方が活躍されることを心より願っています.