さまざまなセッティングで学ぶ家庭医療後期研修 佐治朝子(北海道家庭医療学センター 専攻医) レジデントノート2017年2月号掲載 [SHARE] ツイート さまざまなセッティングに対応できる能力は家庭医の重要な資質の1つです.家庭医療後期研修のなかで経験するそれぞれのセッティングの特徴や魅力を,私の研修を通してご紹介します. 病院研修 プライマリケアの基礎となる内科,小児科,救急診療科を中心にローテートしながら,外来や救急対応,病棟管理などを学びます.初期研修に比べ各科をより長期間にわたって研修することができるので,同じ患者さんとくり返し出会う機会も多く,より継続的な視点が身につきます.病院における診療能力向上はもちろんですが,診療所にこんな患者さんが来たら紹介した方がよいのか? 診療所から紹介した患者さんがどのように治療されていくのか? といった視点も学びます.選択研修としてその他の専門科を研修できることもあれば,北海道の郡部診療所で求められることが多い上部消化管内視鏡も研修します. 郡部診療所 概して病院までの距離が遠いため,その地域で起こる幅広い分野の問題に対応しなければなりません.限られた病床での病棟管理(北海道の郡部は有床診療所が多いです)や救急対応(時には救急車で2時間かけて搬送したり,ドクターヘリも出動したりします),行政や保健との調整など多様なニーズにこたえるための能力を学びます.北海道の郡部ならではの雄大な自然や食を満喫できるのも魅力です. 都市部診療所 雪の中,訪問診療に行くところ. 主に外来や訪問診療を行います.在宅を支える多様な関連医療介護福祉職(高齢者施設職員,訪問看護,訪問リハビリ,薬局,ケアマネージャー,地域包括支援センターなど)との連携はやりがいのある課題の1つです.都市部ならではの多様なイベントや勉強会も多く,積極的に参加することでスキルアップはもちろん顔が見える関係づくりに役立っています. これらのセッティングを1〜2年ずつローテートします.特に診療所では指導医数人と研修医1〜2人という環境が多く,研修医仲間が少なく少し寂しい場面もありますが,年に数回研修医が集まって直接顔を合わせる勉強会の機会が確保されており,日々の学びや悩みを共有しています.それ以外にも,テレビ会議システムを活用してオンライン上で講義や振り返り,メンタリングなどの指導を受けたり,最近はオンラインで研修医同士の飲み会を行ってみたり(意外と盛り上がります!),学習やコミュニケーションにも工夫を凝らしています. 家庭医療後期研修について少しご想像いただけたでしょうか.家庭医療研修として全国共通の部分,北海道独自の部分,さまざまにあると思います.一見するとつかみにくい印象をもたれがちな家庭医療ですが,その多様性も魅力の1つです.同じプログラム内や全国で同じく家庭医を志す仲間と日々切磋琢磨しながら学んでいますので,気になった方はぜひいろいろな家庭医療後期研修を見学してみてください.