ライフキャリアデザインについて考えてみよう 本郷舞依(みちのく総合診療医学センター/坂総合病院 総合診療科) レジデントノート2018年7月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 私は家庭医療専門医として総合病院の総合診療科で働きながら,救急科専門医の夫とともに小学校に入学した長女と3歳になる長男の子育てをし,毎日慌ただしく過ごしている11年目の医師です. 外的キャリアと内的キャリア 自分の進路,キャリアについて悩んでいる方は多いと思います.そんな方に質問します,「どんな医師になりたいですか? 受験のとき,面接のとき,なんて答えましたか?」「外的キャリア」というのは客観的な側面,つまり仕事の内容,実績,地位,肩書(「○○科専門医」など)を指します.一方,「内的キャリア」は仕事に対する動機や意味付け,価値観などで,「自分がどのように働けば幸福を感じるか,働くうえでのモチベーションの源泉は何か,何を大事にしているか」といった主観的な側面です.さて,どちらが重要でしょう? 何をしていると「楽しい」と感じるのか,「“自分が”本当にしたいこと」は何か? という「内的キャリア」を最も大事にしてほしいのです.結局,どんな資格をとったとしても自分の興味のあること,好きなことでなければ続けていてもツライだけです. 総合診療の領域で 家庭医療学夏期セミナーは,「家庭医療について学び,気軽に情報交換でき,将来を考える場所」として全国の医療系学生&研修医と家庭医療・総合診療に携わる医師が集まるセミナーで,毎年300名を超える人が参加・運営しています.私も託児を利用し一家で参加しており,今年も行く予定です. 私の場合,初期研修でいろいろな科を研修しましたが,どれも興味深く,でもしっくりこず,研修修了間際まで進路について悩んでいました.「いわゆる“お医者さん”になりたい」「人の役に立ちたい」という想いで医学の道へ進んだ私は,臓器・疾患へのこだわりはなく,「なんでも診る」「その人全体を診る」という領域にピンときました.それが「総合診療」でした. 総合診療は,ゆりかごから墓場まで,老若男女,健康な方もそうでない方も,とにかく困っている方に対応していく多様性,幅広さをもつことが特徴です.さらに,個人だけでなく,その人をとり巻く家族や地域にもかかわり,多職種・各専門医と一緒に課題に取り組んでいくという協調性をもっています.このように多くの方とかかわりながら仕事をするなかで求められるリーダーシップや組織マネジメントといった能力も総合診療では必要とされ,医学以外の分野についても生涯勉強し続けることができ,本当に楽しい領域です. 仕事もプライベートも 私にとって総合診療医という仕事は本当に興味深く,楽しくてしかたがないのですが,自分自身の人生設計も重要でした.幸い,偶然にも自分と同じ方向性の考えをもち尊敬する相手と生涯をともにすることとなり,妊娠・出産・育児を経験しながらも,県外(宮城→北九州&福井)へ外部研修に行き,カナダへも短期の研修に行きました.これは,常に「自分のやりたいこと」を明確にし,周りと共有することでさまざまなサポートをいただけたというのが大きかったと思います. ぜひ,皆さんも「自分のやりたいこと」をよく見極めて,これからのライフキャリアデザインを考えてみてください. 参考 日本プライマリ・ケア連合学会 総合診療医という選択 女性総合診療医のワークスタイル CASE 03 本郷舞依 家庭医療学夏期セミナー