総合診療後期研修で学ぶ救急 山本安奈〔大阪家庭医療センター(OCFP)╱西淀病院〕 レジデントノート2018年9月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 私は卒後14年目の家庭医/総合診療医です.家庭医/総合診療医のコンピテンシーの1つに,診療の場の多様性があり,外来,病棟,在宅,救急の4つがあげられています.つまりその時々でニーズに合わせていろいろな顔をもちます. 救急の現場の研修内容 恩師の林 寛之先生と(筆者は左) 私は,福井大学の「救急に強い家庭医コース」というプログラムで後期研修を受けました.そのプログラムのなかの魅力の1つとして救急の先生方と一緒に一次〜三次救急に携わるER型の救急研修があります.軽傷患者さんから,外傷やCPAまで,年齢や性別や科にこだわらず目の前の患者さんすべての初療にあたり,帰宅可能? 入院? 専門医コンサルト? といった判断のスキルも学びます. 総合診療研修における救急研修の位置づけ 総合診療研修は大学や市中病院の一般外来,僻地医療,訪問診療など多岐にわたります.どのようなセッティングでも,急変やバイタルサインに異常のある患者さんを診ることは多々あります.その際に慌てず対処し,この場で診られるか否かすばやく判断する力は救急研修の賜物です. 総合診療外来と救急はシームレスな部分が多く,そのどちらにも携わる環境は家庭医/総合診療医の成長にとてもよい相乗効果をもたらします.例えば救急専門医の先生が何を大事にしているか,かかりつけ医に何を期待しているのかを知ることで,総合診療外来ではそれを踏まえ予防的な観点で生活習慣病の管理の重要性を感じることができます.またERでの死は突然のことが多く,家族の悲しみが大きいですがそれを目の当たりにして,かかりつけ医としてのかかわりのなかにおいて本人や家族とどうやって最期を迎える? どうやって最期まで生きる? という話を十分にしておく,といった具合に救急研修が総合外来診療に活かされその逆も然りという相乗効果を感じています. 救急で働く『家庭医』の強み 総合診療研修が進むと家庭医/総合診療医としてのアイデンティティが芽生えてきます.家庭医/総合診療医らしさはたくさんありますが中心となるのは全人的に診るということです.救急の現場ですから一刻を争う状態のことも多々ありますが,ERに来ていても実は本人は救命処置や延命を望んでいないケース(超高齢など)を地域で多く経験するので,救命することだけではなく,本人や家族のこれまでの背景を考慮した医療を検討できるようになります.また救急室を出た後の生活に思いを馳せた行動がとれるようになっています. また救急は他科との連携が何より大切な分野ですが,教育を大事にする家庭医/総合診療医は学生や初期研修医のときに救急で教えた後輩がさまざまな科に進み今度は心強い味方になることもよく経験します. 活躍の場も多く多彩なセッティングで働けるのでまさに『総合診療っておもしろい!!』ですよ!