スマホで読める実験医学
550円

バイスペシフィック抗体の技術開発と医薬品の創製:特に血友病に対する次世代抗体医薬について

Bispecific antibody:Innovative antibody drug for hemophilia A
井川智之
Tomoyuki Igawa:Chugai Pharmabody Research Pte. Ltd./Biologics Discovery Dept., Research Division, Chugai Pharmaceutical Co. Ltd.(中外ファーマボディリサーチ/中外製薬株式会社研究本部バイオ医薬研究部)
10.18958/5653-00001-0001546-00

抗体医薬は,その標的に対する特異性やがん免疫療法を中心とした新しい領域の発展から,多くの製薬企業やバイオベンチャーが,有用なモダリティの一つとして開発に力を注いでいる.バイスペシフィック抗体は,その特性から通常の抗体では達成できない新たな機能を発揮することが期待され注目されている.例えば通常の抗体では,1つの標的分子の作用を中和する一方,バイスペシフィック抗体では,2つの病原物質をしかも同時に中和することができ,薬効の増強が期待されている.また,バイスペシフィック抗体により,同一の標的分子に対して2つの異なるエピトープを認識することで新しい作用機序を提供できるほか,異なる細胞表面抗原を認識するバイスペシフィック抗体には,2種の細胞を架橋することによる薬効の発現,あるいは同一細胞上の異なる抗原を架橋することによる細胞内へのシグナル伝達などの作用が期待されている.本稿では,バイスペシフィック抗体の技術開発と,最近日米欧で承認を得た血友病Aに対するバイスペシフィック抗体であるエミシズマブ(HEMLIBRA®)を紹介する.

非対称IgG型,バイスペシフィック抗体,可変領域,血友病

この記事は有料記事です

(残り約7,600文字)

  • 【スマホで読める実験医学】バイスペシフィック抗体の技術開発と医薬品の創製:特に血友病に対する次世代抗体医薬について
    550円