実験医学 2014年2月号 Vol.32 No.3

生活習慣か,遺伝か,腸内細菌か? 肥満克服のサイエンス

代謝の変容と脂肪細胞の制御から,最新治療まで

  • 梶村真吾/企画
  • 2014年01月20日発行
  • B5判
  • 135ページ
  • ISBN 978-4-7581-0124-0
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

肥満は,エネルギーの摂取量が消費量を慢性的に上回り,余剰なエネルギーが脂肪として蓄積することで生じる.一見簡単な現象のようにみえるが,エネルギー代謝の恒常性は複雑に制御されているため,適切な体重を長期的に維持することは非常に難しい.中枢における摂食制御をはじめ脂肪細胞の質や腸内細菌など多様な肥満要因への理解が深まり,肥満研究は今,制御するステージへと転換期を迎えている.今回の特集では,本分野の多角的なアプローチや抗肥満創薬の最先端を紹介したい.

肥満は自己責任なのか? 新たに見出された脂肪細胞の機能から腸内細菌の驚くべき作用,投薬・肥満手術が代謝をリプログラミングする機序まで.肥満克服を目指す最新知見と近未来の応用技術をもれなく紹介!

目次

特集

生活習慣か,遺伝か,腸内細菌か? 肥満克服のサイエンス
代謝の変容と脂肪細胞の制御から,最新治療まで
企画/梶村真吾
概論─肥満の分子メカニズムを理解し,制御するステージへ【梶村真吾】
肥満は,エネルギーの摂取量が消費量を慢性的に上回り,余剰なエネルギーが脂肪として蓄積することで生じる.一見簡単な現象のようにみえるが,エネルギー代謝の恒常性は複雑に制御されているため,適切な体重を長期的に維持することは非常に難しい.中枢における摂食制御をはじめ脂肪細胞の質や腸内細菌など多様な肥満要因への理解が深まり,肥満研究は今,制御するステージへと転換期を迎えている.今回の特集では,本分野の多角的なアプローチや抗肥満創薬の最先端を紹介したい.
脂肪細胞のエンジニアリングによる抗肥満治療の展望【大野晴也/梶村真吾】
褐色脂肪細胞はエネルギーを消費して熱を産生することに特化した脂肪細胞である.近年の研究から,長期の低温刺激などの環境要因によって白色脂肪組織中に出現する誘導性の褐色脂肪様細胞(ベージュ脂肪細胞)がヒト成人にも存在することが明らかとなり,褐色脂肪細胞の分化誘導を介したエネルギー代謝の亢進と,抗肥満治療への可能性に大きな注目が集まっている.われわれは,褐色脂肪細胞やベージュ細胞の発生・分化のメカニズムを理解する端緒として,転写調節制御因子であるPRDM16や,ヒストン修飾因子であるEHMT1を同定した.本稿では,これらの制御因子を用いて褐色脂肪細胞およびベージュ脂肪細胞をエンジニアリングする試みや,内分泌因子によって白色脂肪前駆細胞の一部を褐色脂肪細胞へ分化誘導することによる抗肥満治療への可能性について概説する.
肥満による慢性炎症性反応と生活習慣病の分子基盤【中村能久】
肥満が,インスリン抵抗性,糖尿病,動脈硬化などのメタボリック症候群・生活習慣病を誘導することが示されて久しい.過去20年におよぶ研究から,肥満では,脂肪細胞や肝細胞といったインスリン標的細胞において慢性的な炎症性反応が誘導され,この炎症性反応がインスリンシグナル・糖代謝を阻害し,さまざまな生活習慣病発症の原因になりうることが明らかになっている.次の大きな課題は,なぜ,どのようにして炎症性反応が誘導されるのか,という疑問の解明であろう.近年の研究から,パターン認識受容体(pattern-recognition receptors:PRRs)の関与が明らかになり注目を浴びている.本稿では,肥満でのPRRsの役割や,炎症性反応を標的にした生活習慣病・2型糖尿病の治療についての知見をご紹介したい.
肥満症に対する外科治療とそのメカニズム【清水英治/畑尾史彦/高西喜重郎】
肥満は世界的に流行している病気であり,早急な治療と対策が求められている.日本でも肥満は増加傾向であり,肥満に起因する合併症,糖尿病,脂質代謝異常,高血圧,睡眠時無呼吸症候群,悪性腫瘍などの健康障害により生活の質そして生命予後が低下する.内科的治療抵抗性の肥満に対しての外科手術(bariatric surgery)は欧米を中心に広く行われてきたが,近年はアジアでも認知度が高く,糖尿病に対する手術(metabolic surgery)としても知られている.今回は,bariatric surgeryのレビューとそのメカニズムを最新の知見とともに紹介したい.
肥満克服のターゲットとしての腸内細菌叢【園山 慶】
肥満マウスや肥満患者には,いわば肥満型とでもいうべき腸内細菌叢が存在する.その因果関係について精力的な研究が行われ,腸内細菌の移植実験などを用いて腸内細菌叢が肥満発症に寄与する環境要因の1つであることが明らかになりつつある.言い換えれば,腸内細菌叢は肥満克服のターゲットとなりうる.実際,腸内細菌叢を改善できる食品(プレバイオティクス)や特定の細菌株(プロバイオティクス)の摂取が肥満を予防・改善できることが報告されており,今後のさらなる研究の進展が期待される.
食欲制御の分子機構【箕越靖彦】
摂食調節機構にはhomeostatic(恒常性)調節とhedonic( 快楽性)調節があり,homeostatic調節は主に視床下部と脳幹が,hedonic調節には「報酬系」を司る中脳腹側被蓋野から線条体(側坐核),辺縁系,新皮質に至るドーパミンニューロンが関与する.分子生物学的手法を利用した光刺激による選択的な神経活動の制御法の開発とfMRIによるヒトでの研究により,摂食にかかわる脳神経回路が少しずつ明らかとなってきた.しかし,中枢性抗肥満薬はまだ少なく,しばしば脳高次機能への影響が問題となる.摂食を選択的に制御する抗肥満薬の開発が求められている.
抗肥満薬の作用機序と臨床開発の展望【竹河志郎/山田幸男】
近年,新規の抗肥満薬が日本ならびに米国において次々と承認された.これらの治療薬は,体重の適正維持が困難であった肥満症患者にとって有効な治療法となり,肥満によって誘引される糖尿病,高血圧,高脂血症状といった疾患の増悪を抑制し,ひいてはリスクファクターの悪化に伴う血管障害,臓器障害を抑制することが期待されている.本稿では,抗肥満薬のターゲット分子,ならびにその作用機構について概説し,新規に承認された治療薬,ならびに現在後期臨床開発中の化合物の体重低下作用と副作用,ならびに副作用の乖離を中心に今後の臨床開発の課題について紹介する.

トピックス

カレントトピックス
母性因子Wave1は転写のリプログラミングと正常な胚発生に必要である【宮本 圭】
GPCRの分子ゆらぎの平衡点によって決まる嗅神経軸索の投射位置【坂野 仁】
亜鉛欠乏時に働く小胞体ストレス誘導スイッチとしてのSOD1の新規機能【本間謙吾/一條秀憲】
不快な社会的刺激は外側中隔のオキシトシン受容体を介し恐怖記憶を強化する【西森克彦/Yomayra F Guzmán/Jelena Radulovic】
組織恒常性維持の立役者?【谷村 進/武田弘資】
Miat/Gomafu の逆襲【中川真一】

連載

【新連載】統計の落とし穴と蜘蛛の糸
データ解析の第一歩は計算ではない【三中信宏】
クローズアップ実験法
組織透明化試薬SeeDB を用いた脳の3D 蛍光イメージング【柯 孟岑/今井 猛】
教えて!エコ実験 −工夫&節約のメリハリ研究術
エコ抗体作製【村田茂穂】
創発生物学への誘い −神秘のベールに隠された生命らしさに挑む
創発する力学−化学場:自己駆動型形態形成【笹井芳樹】
私のメンター 〜受け継がれる研究の心〜
Timothy J. Mitchison −細胞骨格研究の偉大なジーク【渡邊直樹】
Campus & Conference 探訪記
ゲノム編集革命 熱狂の中で −第3回ゲノム編集研究会【相田知海】
ラボレポート −独立編−
ジュニアPI にとってのアメリカの研究環境− Friedman Brain Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai【森下博文】
Opinion −研究の現場から
「場」が融合させる新しい研究分野~合宿のススメ【吉種 光】

追悼

森脇和郎先生を偲んで【一戸裕子】

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