第3回 さあ,書きはじめよう! 研究課題名と研究目的
科研費と学術論文の審査は似ているようだが,大きな違いがある.それはなんだろうか? 学術論文では結論の部分が重んじられるが,科研費の申請書では「研究目的」の部分が一番大切になる.したがって,この「研究目的」の部分に全力を注ごう.申請書の冒頭で,何を研究するのかを審査員に十分に理解してもらって,その後の部分を読んでもらえるようにしなければならない.そのためには,まず冒頭に応募する研究内容の要約を書いておくとよい.題名はそれだけで研究内容がわかるようにして,さらに格好いいものをめざそう.
というわけで,今回から実際の申請書の記入項目に沿って書き方について述べていく.研究費獲得のための申請書作成における重要なポイントは次の2点に尽きると思う.
申請書を作成するときに忘れてはいけない重要なことは,科研費はあくまでも3~6名の審査員に理解してもらうために書くものだということ.学術論文の場合も,審査するのは2~3名のレビュアーであるから,似たようなものだと思うかもしれない.しかし,科研費と学術論文の審査員には大きな違いがある.
学術論文の場合,まず投稿された論文が編集者によるチェックを受けて,その内容から審査員が選ばれる.よって,審査員は少なくともその論文についてのエキスパートである.
しかし,科研費の場合は申請書の内容から相応しい審査員を選ぶのではない.審査員がまず決定されて,そこに申請書が送られてくる.審査員は審査分野の専門家といっても,必ずしもその分野のすべての範囲に詳しいとは限らない.しかも学術論文のレビューでは1つの論文にじっくり集中できるが,科研費の審査では1人の審査員が100課題くらいの申請書を相手にしなければならないので,どうしても1つの申請書をチェックする時間は限られる.
※データ・年次などは連載当時のものです.現在とは異なる場合があります
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行