生物の体内組織はそれぞれ適切な形態(かたち)をもち,その形態は組織を構成する細胞の適切な配列によってつくられている.胚発生過程では,各組織を構成する細胞群が組織の最終的につくられる形をめざして移動する必要があるが,おのおの細胞がどのように正しい移動先を認識できるのか,そのメカニズムに関しては不明点が多い.今回Szabóらはアフリカツメガエル胚を用い,免疫機能をもつことでよく知られる補体とその受容体が,免疫とは関連のない組織形態形成に必須の機能を果たしていることを示した(András Szabó et al:Dev Cell, 37:213-225, 2016).
補体は病原体を体内で攻撃する免疫システムの一部として発見され,免疫学以外ではほとんど注目されてこなかったと言ってよい.以前,同研究グループは,発生過程における神経堤細胞の方向性をもった移動に,補体の一種であるC3aとその受容体による化学走性が貢献していることを示した(Carmona- Fontaine et al:Dev Cell, 13:1026-1037, 2011).今回は,
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