樹状細胞(dendritic cells,DC)は,抗原特異的にT細胞を強力に活性化する免疫応答の主力細胞である.血中の単球や骨髄細胞を顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)で分化誘導した樹状細胞(GMDCと総称)が強力な抗原提示細胞となるという知見(Sallusto F & Lanzavecchia A:J Exp Med, 179:1109-1118, 1994)に基づき,GMDCをがん抗原で刺激したものは,投与後がん抗原特異的T細胞を刺激し,活性化されたT細胞はがんを攻撃するであろうことから,がんワクチンとして機能することが期待されていた.実際,この理論に基づき米国デンドレオン社が開発した前立腺がん治療用ワクチンであるシプリューセル-T(Sipuleucel-T)は患者から採取した単球より樹状細胞を作製したもので,アメリカ食品医薬品局(FDA)に認可もされている.しかし,その後同様の手法を使った樹状細胞ワクチンの治験で期待されたほどの効果がなかったことや,どうやらGMDCは投与後にがん抗原を放出し,内因性の古典的樹状細胞(conventional DC,cDC)に手渡すことだけで効果を得ていると判明するに至り(Kleindienst P & Brocker T:J Immunol, 170:2817-2823, 2003),戦略の見直しが示唆されていた.
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DOI:10.18958/7131-00004-0000260-00