最近ウィーン大学のシマコフ博士らが報告した動物の全ゲノム比較研究は,ゲノム進化分野の一里塚的な意味をもつと思われるので紹介したい(Simakov O, et al:Sci Adv, 8:eabi5884, 2022).彼らが対象としたのは,クラゲ,ホタテ貝,ナメクジウオなど21種で,いずれもゲノム配列がほぼ染色体の長さ程度まで解読されている動物である.シマコフらは21種における動物界全体の深層シンテニー(deep synteny)のリストを作成した.深層シンテニーとは,数億年経っても座位が同一染色体上に保存されている遺伝子セットのことである.このリストから,彼らは2つの重要な結果を得た.ひとつは,動物の共通祖先から現在に伝わる深層シンテニーを祖先的連鎖遺伝子群(ancient linkage groups,ALGs)と名付け,その数が29であることを突き止めたこと
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DOI:10.18958/7131-00004-0000262-00