遺伝性乳癌卵巣癌症候群では,生殖細胞においてがん抑制遺伝子であるBRCA1やBRCA2(以下,BRCA)の片アレル機能喪失変異をもつ.この変異があると,生涯における乳がん罹患率が70〜80%,卵巣がん罹患率が20〜45%上昇し,それらのがん細胞ではもう片方のアレルにもBRCA変異が生じていることが多い(loss of heterozygosity,LOH).BRCAは,DNA二重鎖切断に必要な相同組換え機能をもつので,BRCAの両アレル変異はゲノム不安定性を加速させるためがん化につながることはよく知られている.しかし,BRCAの片アレル変異があっても相同組換えは正常に機能するため,LOHの原因になるとは考えにくく,なぜBRCAでLOHが起こりやすいかは不明だった.
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DOI:10.18958/7173-00004-0000354-00