News & Hot Paper Digest
トピックス

一次運動野による痛み緩和の神経回路基盤

理化学研究所生命機能科学研究センター 稲田健吾,宮道和成

みは身体の損傷を知らせ,損傷から回復する間にさらなる負荷をかけないよう警告する意味をもつ重要な感覚である.しかし原因不明の痛みや,治療困難な疾患・損傷に由来する痛みは,生活の質を大きく低下させる要因の一つである.痛みを抑えるために人類は鎮痛剤を開発したが,いまだに使用量や頻度に制限があったり,また継続的な使用により鎮痛効果が落ちたりすることも知られている.そのため新たな鎮痛法を探る基礎研究が世界中で行われている.一次運動野は大脳皮質のなかで,運動の指令を送り出す領域であるが,近年ヒトの一次運動野は手に痛みを感知した際にも活動することが報告された(Frot M, et al:Hum Brain Mapp, 34:2655-2668, 2013).しかし痛みと一次運動野の関係性はいまだによくわかっていない.今回,独ハイデルベルグ大学のKuner博士らの研究チームは,マウスの一次運動野が痛みの緩和に関与していること,そして一次運動野の異なる層は異なる下流の神経回路を介して痛みの緩和において機能的に異なる役割をもっていることを明らかにした(Gan Z, et al:Science, 378:1336-1343, 2022).

.....

本コンテンツの続きをご覧いただくためには「羊土社会員」のご登録が必要です.

DOI:10.18958/7223-00004-0000409-00

2023年4月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2023年4月号 Vol.41 No.6
クローン進化 病の起源を探る
がんの不均一性はなぜ生まれるのか 正常組織はいつ・どこで変異を獲得するのか

小川誠司/企画
サイドメニュー開く