複数要因により調節される生命現象に対して効果的に介入するには,現象への寄与率の高い要因(群)を標的とする必要がある(図2).東洋医学では,複数要因に対してマイルドに働きかけて,総合的な効果を期待する.西洋医学では,「複数要因への作用=副作用が多い」と捉え,単一要因だけに強い作用を示す創薬を進め,薬剤の併用により複数標的に介入してきた.そして,「複数の分子標的に作用する単一物質の創薬」は “crazy” な概念とみなしてきた.しかし,生理活性物質は複数標的に作用し総合的な効果(生理作用)を発揮する(例:カテコラミンとα1-2,β1-3受容体).複数標的薬の開発が,可能かつ非常に効果的であることが,最近のTirzepatideを対象とした臨床研究において証明された.
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DOI:10.18958/7405-00004-0001121-00