生命はホモキラルな分子(片方の鏡像異性体)でできている.DNAやRNAはd-デオキシリボースとd-リボースを含み(本稿ではd-DNAやd-RNAとよぶ),タンパク質はl-アミノ酸からなる.d-DNAやd-RNAに保存された遺伝情報は,ワトソン-クリック型塩基対を形成する相補的なd-DNAやd-RNAに写し取られ,複製する.一方で,実験室のなかではそれらの鏡像異性体であるl-DNAやl-RNAもつくり出せる.しかし,一般的にd型とl型の核酸分子間に相補性はなく,これらの異性体間で,すなわち“鏡越し”に遺伝情報は複製できないと考えられていた.今回,この常識を打ち破るような,d-RNAとl-RNAが協働して複製する人工システムが開発された(Cochrane WG, et al:Proc Natl Acad Sci U S A, 121:e2413668121, 2024).
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DOI:10.18958/7683-00004-0001867-00