めざせ実験の達人-トラブル回避のコツと最新キットで極める!
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めざせウエスタンブロッティングの達人
Question

Q19. メンブレンのバックグラウンドは見えますが,バンドは全く見えません…

Answer
A.一次抗体を濃くするか,新しい一次抗体を使おう
メンブレンのバックグラウンドが見えているということは,二次抗体や検出液には問題がない可能性が高い.バンドが見えないということは一次抗体が薄いか弱っている.抗体は凍結融解で力価が著しく低下する.また,防腐剤や安定剤がないと4℃保存でも数カ月程度で力価が低下する.
A.電気泳動にアプライしたタンパク質量が少ない可能性があるので,アプライするサンプルを増やすか濃縮するかしよう
検出感度以下の量しか目的タンパク質が存在しない場合,当然見えない.核局在性タンパク質の場合などは,細胞ホモジネートのアプライでは見えない場合でも,核抽出サンプルのアプライでは検出可能になることも多い.このように何らかの方法で濃縮を試みる.
A.一次抗体の反応性が悪い可能性があるので,違う一次抗体を使ってみよう
内因性の微量タンパク質などの場合,よほど強い抗体でないと見えないのがふつうである.特に市販抗体は使用用途に制限があるものも多い.文献等で同じような検出条件で検出例がある抗体であれば,期待できる.
A.ブロッキング液の組成や濃度を確認し,必要に応じて変更してみよう
ブロッキングが強すぎる場合も,バンドが検出できなくなる.一般に汎用されるブロッキング剤のなかでは,スキムミルクが一番ブロッキング力が強い.そこで,スキムミルク濃度を下げてみたり(例:5%から2%など),スキムミルクの代わりにBSAや市販の合成ブロッキング剤を使ってみるなど工夫してみる.
A.ブロッキングの時間を変更してみよう
7ブロッキング時間が長すぎる場合も,バンドが検出できなくなる(オーバーブロッキング).通常,ブロッキングは室温1時間で十分である.実験の都合で一晩ブロッキングすることもあるが,一般に反応は弱くなる.2日以上ブロッキング液に浸けておくと反応は著しく低下する.
A.抗体反応促進剤を使ってみよう
抗体反応を促進させる試薬がいくつかのメーカーから販売されている(TOYOBOのCanGet Signalなど).これを用いることによって,検出できなかったバンドが検出できるようになる場合がある.ただし,二次抗体を希釈する等の至適化の必要がある.

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プロフィール

森山先生
森山 達哉(Tatsuya Moriyama)
京都大学農学部食品工学科卒.同大学院農学研究科修士課程,博士課程ののち,京都大学食糧科学研究所助手 等を経て2005年に近畿大学農学部講師,2008年准教授.その間,1996年米国スタンフォード大学招聘研究員(1年間).毎日多くの元気な学生たちと一緒に,食品成分の生理機能性(特に脂質代謝への影響)と安全性(特にアレルゲン性)に関する研究を行っている.基礎研究だけでなく,社会の役に立つ「アウトプット」を意識した研究を進めています.
<著作>
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