実験医学 2013年6月号 Vol.31 No.9

命名から50年 オートファジーで解明した謎,解明したい謎

細胞への栄養素供給・細胞内浄化のメカニズムと,ヒト疾患への関与

  • 水島 昇/企画
  • 2013年05月20日発行
  • B5判
  • 133ページ
  • ISBN 978-4-7581-0096-0
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞内分解機構である.酵母をモデルとしたオートファジー関連遺伝子(ATG遺伝子)群の発見を契機に,この10年あまりでオートファジーの研究は飛躍的に進展した.その結果,オートファジーの分子機構や生理的意義の理解は大きく進み,疾患との関係も徐々に見えはじめてきた.しかし,本質的な課題の多くはまだ解かれていない.本稿では,これまでにわかってきたオートファジーのしくみと機能を概説し,さらに現在どのような課題が残っているかを解説する.

日本が世界を牽引するオートファジー研究.隔離膜の由来から個々のAtg因子の機能まで,疾患への繋がりが見えた今,問い直すべき未解決問題.初学者が読むべき文献を指南するメタレビューとしての概論も必読!

目次

特集

命名から50年
オートファジーで解明した謎,解明したい謎
細胞への栄養素供給・細胞内浄化のメカニズムと,ヒト疾患への関与
企画/水島 昇
オートファジーのしくみと機能【水島 昇】
オートファジーはリソソームを分解の場とする細胞内分解機構である.酵母をモデルとしたオートファジー関連遺伝子(ATG遺伝子)群の発見を契機に,この10年あまりでオートファジーの研究は飛躍的に進展した.その結果,オートファジーの分子機構や生理的意義の理解は大きく進み,疾患との関係も徐々に見えはじめてきた.しかし,本質的な課題の多くはまだ解かれていない.本稿では,これまでにわかってきたオートファジーのしくみと機能を概説し,さらに現在どのような課題が残っているかを解説する.
オートファゴソーム膜の起源の謎【濱崎万穂/吉森 保】
本稿では,動物細胞におけるオートファゴソーム膜形成過程における他の細胞内オルガネラの関与について,これまでの報告と最新の結果をまとめて紹介する.オートファゴソームは,他のオルガネラと異なり常時存在せず必要時に細胞質で形成される.オートファゴソーム形成に関与する遺伝子群が同定されオートファジーの生理機能の解明が進む一方で,オートファゴソームがどこでどのように形成されているのかは分野最大の謎として残されてきた.最近,既存のオルガネラをオートファゴソーム膜の起源と考えるモデルが,複数提案されている.
酵母が映し出すオートファゴソーム形成機構の最新像と未解決の重要課題【中戸川 仁/大隅良典】
オートファジー研究の飛躍的な発展の引き金となった酵母でのATG遺伝子群の同定から,今年で20年の節目を迎える.この間,酵母での研究は,オートファジーの分子機構,特にオートファジーにおける最大の謎であるオートファゴソームの形成機構の解明に向けて常に先導的な役割を果たしてきた.Atgタンパク質群の基本機能や細胞内動態について多くのことがわかってきたが,これらがどのようにしてオートファゴソームの形成を駆動するのか,という根本的な問いに答えるには,さらなる挑戦が必要である.
オートファジーの構造生物学【野田展生】
オートファジーを司るAtg因子の構造研究は,Atg8結合系およびAtg12結合系について大幅な進展がみられ,結合反応および脱結合反応の分子基盤が明らかとなった.結合系以外のAtg因子についても,Atg17-Atg31-Atg29複合体やAtg18パラログ,Atg6などの構造が明らかになるなど,構造研究が急速に進展している.しかし一方で,これらAtg因子がその構造を用いて時空間的にどのように集積し,オートファゴソーム形成をひき起こすのか,依然未解決になっている課題についても紹介する.
選択的オートファジーの最新像と未解決問題【小松雅明】
選択的オートファジーは変性・易凝集性タンパク質,異常・過剰オルガネラ,さらには細胞内侵入細菌を特異的に排除し,細胞恒常性維持に貢献する.したがって,選択的オートファジーの異常は,神経変性疾患,がんや感染症をはじめとしたヒト疾患発症に関与すると考えられる.本稿では,高等動物におけるユビキチンシグナルを介した選択的オートファジーの分子メカニズムおよびその問題点について概説するとともに,オートファジー不全マウスの病態と選択的オートファジーの関連について紹介する.
自己分解系としてのオートファジー制御の課題【野田健司/吉良新太郎】
オートファジーは栄養飢餓により誘導されるが,細胞全体を分解してしまう前の段階で停止する.おそらく多面的な因子がその制御に関与していることが予想されるが,その全容は明らかとなっていない.本稿では,オートファジーの制御機構に関して現在知られていることを概説し,そのうえで何が未解決の問題として残されているのかを紹介する.そのなかでも特に,最近さまざまな報告がされているアミノ酸濃度の感知機構とオートファジーの制御とのかかわりに注目する.
オートファジーの生理機能とヒト疾患への関与【水島 昇】
オートファジーには栄養素供給や細胞内浄化などの基本作用があることが,この約10年間の研究によって明らかにされてきた.一方で,疾患との関係も多方面から示唆され,ついにオートファジー関連遺伝子そのものに変異をもつヒト疾患も発見された.しかし,これらはまだオートファジーの基本骨格の一部が見えてきたにすぎず,真の理解には至っていない.さらに,ヒト疾患の治療や診断とオートファジーとの関連は,残念ながらまだほとんどが手探り状態にある.本稿では,現状を解説しながら,現時点での問題点を議論したい.

Update Review

拡大するテロメラーゼのバイオロジー【毎田佳子/増富健吉】

トピックス

カレントトピックス
哺乳類の塩味受容機構の解明【岡 勇輝】
酵母のすべての遺伝子の「限界コピー数」を測る【金高令子/蒔苗浩司/守屋央朗】
iPS細胞技術を用いたがん抗原特異的T細胞の再生【Raul Vizcardo/増田喬子/山田大輔/河本 宏】
Dclk1は腸管の腫瘍幹細胞を特異的にマークする【中西祐貴/妹尾 浩/千葉 勉】
アポトーシス細胞の貪食におけるGRK6の役割解明【仲矢道雄/黒瀬 等】

連載

クローズアップ実験法
SINEUPsTM:タンパク質合成を促進する新規RNAツール【髙橋葉月/薬師寺秀樹/Piero Carninci】
絵で見る先端分子生物学
【最終回】夢の技術:機能性タンパク質のデザインへ【解説:胡桃坂仁志/絵:松本亮平】
私のメンター ~受け継がれる研究の心~
Lewis L. Lanier ―“Dr. Natural Killer”,NK細胞研究のトップランナー【渋谷 彰】
Campus & Conference探訪記
おもろい研究! 君ならできる,ここでできる【田中明美】
ラボレポート ―留学編―
チャレンジングな研究をしてみませんか?―Indiana University School of Medicine【今崎 剛】
Opinion ―研究の現場から
日米比較! working motherはどっちが楽?【渡辺 玲】

関連情報

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  • 【本書名】実験医学:命名から50年 オートファジーで解明した謎,解明したい謎〜細胞への栄養素供給・細胞内浄化のメカニズムと,ヒト疾患への関与
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