もっと楽しく効果的に研修医指導を行うためのコツが一冊に!研修医に伝わる怒り方,個性に合わせた接し方,カンファレンスを刺激的にするコツなど,今日から実践できる指導術が満載!豊富なイラストが楽しくリアル!
Part2 個性に合った指導のススメより抜粋
このように、教育と診療は車軸の両輪のようなところがある。よりよい診療はよりよい教育のヒントや糧となり、その逆もまた真である。研修医が自分で問題点を掘り起こせるよう、それを促すのも研修医教育の大きな仕事である。そこで、大事なのは「突っ込みのスキル」である。突っ込みのスキルで質問力を形成するのである。
いったい、どういうことか?
というふうに対話のなかでどんどん突っ込んでいく。「なぜ」「どうして」という質問を連打し、問題点を掘り起こすデモンストレーションを行う。こうした会話のなかから、例えば「高齢というだけでは貧血にはならない」「鉄欠乏性貧血に鉄剤を出すだけで終わってはいけない」というような箴言をじわりと醸し出すことができる。もちろん、「高齢というだけでは貧血にはならない」「鉄欠乏性貧血に鉄剤を出すだけで終わってはいけない」という言葉を「パール」として教えてやってもよい。でも、そういうフィーディングだけでは記憶に残りにくい。質問を投げかけ、自分の頭で考えさせると効果は倍増する。
もうひとつ、突っ込みの際に大切なことがある。それは、常に「裏のシナリオ」を考えることである。
キーワードは、「そうでないとしたら?」である。
上の例でも、慢性炎症に伴う貧血だけでないとしたら?という質問が、さらなる深い議論の呼び水となる。突っ込みは、研修医に自らの頭を使って考えろ、という誘いかけなのである。
ほとんどの研修医が問題点を掘り起こすような頭の使い方をしたことがないから、テーブル回診でいきなりこれをやるのは、苦痛である。産みの苦しみなので、何とかここをがんばって持ちこたえる必要がある。バカの一念岩をも通す。繰り返し毎日やっていると、数週間で「考える」頭の萌芽が現れる。本当は学生のうちから、できれば小学生くらいからこういうトレーニングで鍛えておくべきなのだが、泣き言を言ってもしようがない。
さて、突っ込みを入れる。
「……」と研修医が即答できないとき、あまり長く引っ張るのは禁物である。長い沈黙は人を追い詰める、拷問だからである。嘘だと思ったら、試しに今度やってみてください。苦痛ですよ。
研修医が即答できないときは、即座に解答を与えてもいいし、他の研修医に振ってもいい。1 年目から2 年目、3 年目というふうに下から上に聞いていくのが基本である。どんどんテンポよく振っていく。振ることによってリズムが変わる(1人だけ責められている感じが薄れる)し、「おれも当てられるかも」という緊張感で眠気は薄まる。みんなで1つの問題に取り組んでいるので、チームとしての一体感も高まるかもしれない。
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