症例:吐血を認めた中年男性2 症例1のつづき 救急初療室搬送直後,50 mL程度の赤黒い吐血が1回あり.口腔内をチェックすると血餅はあるが持続性の出血はなし.バイタルサインは搬送中と変化なし.心拍数128回/分,橈骨動脈触知不良,末梢冷感・湿潤,意識障害があったためショック対応が必要と判断し末梢静脈路を18 Gで2ルート確保し酢酸リンゲル液全開投与を開始.輸液前の血液ガス検査ではHb 8.5 g/dL.酢酸リンゲル液1 L投与後もバイタルサインは変化しなかった. ※クリック/タップで拡大します ⓑ 消化器内科医に相談 問題の解説:緊急内視鏡の適応を考える 緊急内視鏡の適応は施設ごとに定められている場合もありますが,ショックをきたしている上部消化管出血においては原則として緊急内視鏡が推奨されますので,まず消化器内科医に相談をしましょう. 一方で,ショックではない,バイタルサインが安定している上部消化管出血はどうすればよいのか,困るポイントかと思います.その際に助けとなるのがGlasgow-Blatchford score(GBS,表2)です.GBSはバイタルサイン,血液検査,病歴によって緊急内視鏡の必要性を評価するスケールです.0~23点で評価され,点数が上がるほど緊急内視鏡を要する可能性が上昇し,1点以下では再出血や死亡のリスクがきわめて低いため,入院や内視鏡の必要性はほぼないとされています3). また胸腹部造影CTや胃管といった検査処置も緊急内視鏡適応の判断に役立ちます.造影CTは造影剤の血管外漏出(extravasation)があれば活動性出血が示唆され,胃食道静脈瘤や腫瘍などCTで判別できる病変があれば出血部位の特定に役立ちます.胃管は病歴から上部消化管出血かどうか確定できないときに有用であり,吸引で鮮血やコーヒー残渣様嘔吐物があれば活動性出血が示唆されるため緊急内視鏡が推奨されます.ただし胃管から鮮血やコーヒー残渣様嘔吐物が吸引できなかったとしても緊急内視鏡が必要となることもあり,GBSが低い場合の追加検査としての使用をおすすめします. 参考文献 Blatchford O, et al:A risk score to predict need for treatment for upper-gastrointestinal haemorrhage. Lancet, 356:1318-1321, 2000(PMID:11073021) Barkun AN, et al:Management of Nonvariceal Upper Gastrointestinal Bleeding: Guideline Recommendations From the International Consensus Group. Ann Intern Med, 171:805-822, 2019(PMID:31634917) (2021/08/26公開) 戻る この"ドリル"の掲載書をご紹介します 救急外来ドリル 熱血指導!「ニガテ症候」を解決するエキスパートの思考回路を身につける 坂本 壮/編 定価:4,400円(本体4,000円+税) 在庫:あり 月刊レジデントノート 最新号 次号案内 バックナンバー 連載一覧 掲載広告一覧 定期購読案内 定期購読WEB版サービス 定期購読申込状況 レジデントノート増刊 最新号 次号案内 バックナンバー 定期購読案内 residentnote @Yodosha_RN その他の羊土社のページ ウェブGノート 実験医学online 教科書・サブテキスト 広告出稿をお考えの方へ 広告出稿の案内