レジデントノートインタビューコーナー『あの先生に会いたい!』では,さまざまなフィールドでご活躍中の先生に,医師として歩んでこられた道のりや,現在,そして将来のこと,さらに私生活とのバランスの取り方などについて語っていただきます.また番外編では,本誌に収まりきらなかった内容をホームページ限定で紹介していきます.
高田先生(以下敬称略):工夫するという「発想」と,ないときにほかの代替品を使ってやるという「決断力」ですよね.そこで必要となる「発想」や「決断力」というのは,救急医療をはじめ,どの医療でも必要なことだと思うのですが,それは先生を見ていると,普段の診療のなかでもビックリするほど,本当にたくさんありますよね.
今先生(以下敬称略):そんなにありましたか.
高田:はい.今の話もそうでしたが,どうやってそういうことを思いつくのかなと驚きました.気管チューブを胸腔ドレーンの代わりに入れたということにしても,恐らく私なら「現場が切迫している状況で早く対処しなくてはいけない」し,別な頭では,「胸腔ドレーンがないことに対してどうにかしなくてはいけない…」となって,たぶんその先の発想が出ないと思います.そういう発想力や決断力というのは,特に救急医療の現場で必要だと思うのですけど,そういうものをどこかで訓練したり,常にイマジネーションを膨らますようなことを,何か日常でされているのですか.
今:すべてが自分のオリジナルではないと思います.恐らく私がした工夫に近いようなことを,先に本に書いている人がいて,そういうことをどこかで見たりしていたのだと思います.もちろん気管チューブを胸に入れた人は,恐らく世界中にもあまりいないのではないかと思いますが,例えば,輪状甲状靱帯切開するときにボールペンを刺したとか,胸腔穿刺するときに針金やハンガーで刺したとか…,そういう,「えっ!?」と思うようなことがどこかで活字になっているのですよね.それを見たら「ああそうなんだ,今度あったらやろう」と考えます.
そういうことを考えていれば,あとは現場次第です.たくさん現場を踏んでいるうちに「ついに来たか,この危機的状況.ここには自分しかいない!これをクリアするには,さあ,どうするか?」「あれ持ってこい,これ持ってこい」「全然出てこない」「さあ,どうするか?」ということですよね.どこかで読んだり見たりしていれば,なんとなく,そういうことを瞬間的にできるようになります.それで上手くいけば「よし」という工夫ですね.場数を踏むことと,それが上手くいかなければ,「次これ」といった代替法を何か常に身につけていれば,大胆な工夫をやってみる勇気はもてると思いますけどね.
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