雑誌『レジデントノート』に掲載された「科学で見る恋愛講座」をWEBでも順次公開してまいります!.
ついに恋愛のゴールである「結婚」にたどり着きました! さて,われわれ医師はどのようにして結婚するのでしょうか? 今までの話と同様に,やはり結婚にも何らかの法則が隠れていそうです.今回は医師の結婚をとり巻く現状を知り,そのためにわれわれがとるべき行動を,今までに得られた知識を使って考えてみましょう.科学で見る恋愛講座,応用編のスタートです!
まず,皆さんの将来結婚する相手が誰かを考えてみましょう.次のページの図をご覧ください1).男性医師の場合,結婚相手の2割強が女性医師,3割強がほかの医療従事者です.つまり男性医師の半分以上は,病院の医療関係者と結婚していることになります.そして女性医師となると医師同士のカップル率が非常に高く,女性医師の3人に2人は男性医師と結婚しています.こう見ると,男女ともに院内に花嫁・花婿候補がいるといっても過言ではありません.職場のスタッフに「ビビビ」ときたら,数年後には家庭でも一緒に働いているかもしれないですね(ビビビって死語?).
巷では「医者はモテる」と噂されますが,はたしてそうでしょうか? 「そんなことはない」と否定する研修医が多いのですが,私は男性医師に限定すると「医者はモテる」と断言します.それを裏付ける生涯未婚率のデータをお示ししましょう(生涯未婚率とは,50歳の人のなかで過去に一度も結婚をしたことがない人の割合).
1930~60年代の日本の生涯未婚率は,男女ともに約1%でした.しかし,現在の生涯未婚率は男性20%,女性10%で2),本当に結婚しづらい時代になったと痛感させられます.本題に戻りますが,この生涯未婚率を「医師」だけに限定してみると,男性医師の生涯未婚率はなんと3.5%まで激減し,一方,女性医師は19%と日本人全体の2倍近くに増加するのです3).結婚氷河期のこのご時世でも,男性医師はけた外れに結婚しやすい職業だといえます.逆に女性医師になると,比較するのが申しわけないほど結婚のハードルが上がります.同じ医師なのに,どうしてこれほどの男女差が生まれたのでしょうか.
第3話(2016年6月号)で,女性は男性の経済力を重視することを科学的に説明しました.世間で認知されているとおり医師の年収は高く,男性医師の未婚率が低い事実とも合致します.逆に女性が経済力をもった場合は,どうなるのでしょうか? 経済力のある女性は,経済的に男性に依存しないため,男性の経済力を重視しなくなりそうですが,実際はその逆です.女性が経済力をもつと,より経済力の高い男性を求める傾向があり,結婚相手のストライクゾーンは狭まるのです4).さらに女性が経済的に自立すると,離婚が起こりやすくなる ことも示されています5).これは女性の地位が高まった現代社会ではじめてみられた現象ではなく,なんと紀元前の古代ローマ時代においても,財産権を有した女性の間で離婚が流行したそうです.結婚に関して,女性が経済力をもつことは,選択の不自由と別れる自由をもたらすのです.
さらに第3話では,男性は女性の「外見的魅力」と「若さ」を重視することも説明しました.外見は生まれもった資質,そして若さは限定的な期間で,いずれも経済力とは違って個人の努力でコントロールが困難な要素です.しかも若さが輝く研修医時代は,多忙な日々をすごし,恋愛から遠ざかる女性も多いでしょう.さらに若さをつぎ込んで,一人前の女医になったあかつきには「経済力」を身につけているのです.女性医師の生涯未婚率の高さには,こういったことが背景にあるのです.
しかし,乙女よ,嘆くことなかれ.今までの恋愛講座を読まれてきた女性読者の皆さんは,結婚に近づく基礎知識をすでに身につけています.恋愛感情は,原始的な脳が起こす本能の仕業で,3年以内に消滅する不安定な感情であり,結婚の必要条件ではありません.好意の返報性を駆使し,赤色を身にまとい,ボディタッチで印象をよくし,非言語的合図で男性の恋愛スイッチを入れましょう! 恋愛に対する幻想を封印し,結婚を最終目標に打算的に攻勢をかけるのです! 大丈夫,君たちには「若さ」という強力な武器がある,うんうん.
一方男性の場合,医師として鍛錬することは,同時に社会的地位や経済力も高まるため,女性から見た魅力も高まり,結婚に向けて前進していくことにつながります.医師国家試験より合格率が高いのが結婚なわけで,戦略は不要でしょう.とにかく男を磨いて,体当たりで頑張れ! (結局,男は根性論?)