アルコール健康障害対策基本法で何が変わるか? 吉本 尚(筑波大学医学医療系 地域医療教育学/附属病院 総合診療科, アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク 幹事) レジデントノート2014年12月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 救急医療を含めた医療現場ではアルコールが原因の健康障害をもつ方々は多く存在し,医療者として対応が必要になります. 実は,国際的な観点からみると,アルコールに関連する問題の対策は今現在注目を集めている話題です.同じ嗜好品のタバコの規制・対策が広がったのを受け,次の対策としてアルコールの有害な使用が話題とされています.2012年に世界保健機構(WHO)が「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を打ち出し,それに合わせて世界各国が対策を進めており,日本でもアルコールに関する学会等から法律を作る声が上がりました.総合診療の領域がアルコールの有害使用による健康障害の予防や早期発見・介入に重要な役割を担うことから,私も自発的に参加し,法律制定のために活動しておりました. アルコール健康障害対策基本法の成立 図 こんなにある「アルコール関連問題」文献1を参考に作成. そのようななか,日本では2013年12月7日にアルコール健康障害対策基本法(以下,基本法)が参議院本会議全会一致で可決されました.図のように身体的・精神的な健康障害から虐待,飲酒運転,妊娠中の胎児の問題など非常に多岐に及ぶアルコールに関連した問題1)は,これまで各担当省庁がバラバラに対応していましたが,この基本法によって内閣府が中心となって統合した国の基本計画が設計されることとなり,さらに各都道府県が推進計画の策定をしていく予定になっています. 基本法成立で日本の医療者に求められることは? 日本のアルコールに関する対策は,以前はアルコール依存症への対応が中心となっていました.今回の基本法の成立で,アルコール依存症の前段階からのかかわり,すなわち過剰飲酒者の適切な発見および早期介入がより意識され,そのための紹介・連携体制,教育体制が国や地方公共団体の協力のもと,整備されることになっています.総合診療を担う医師を含めた多くの医療者が,問題のある飲酒を行っている人を適切に発見し,簡単な介入を実施し,必要があればアルコール専門医への紹介を適切に行うことが今後求められてくると考えています. 文献 アル法ネット(アルコール健康障害対策基本法推進ネットワーク)HP:http://alhonet.jp/(2014年9月閲覧)