総合診療はおもしろい!

交流を超えた交流会をめざして ~若手医師交流会・二次会報告~
阿部計大(日本プライマリ・ケア連合学会 専門医部会若手医師部門 委員/東京大学大学院 公衆衛生学 博士課程)

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2017年5月13日から2日間にわたって日本プライマリ・ケア連合学会学術大会が高松市で開催された.約4,700名が参加した学会のなかで若手医師交流会を行った.初期研修医や専攻医,専門医取得後5年以内の若手が集結した.

若手の成長にはネットワーキングが大切

専門医制度の変革が検討されるなか,『総合診療専門医』の道を候補の1つとして考えている医学生や若手医師も多いことだろう.専門医を取得する動機はさまざまであるが,医師として成長して社会に貢献すること,そして人として成長するための1つの礎と考えている人もいるのではないだろうか.成人学習・職業発達論の権威であるロバート・キーガン先生(ハーバード大学教育学大学院 教授)は,著書のなかで自分自身の変革・成長に成功する人の共通点は“周囲の人たちの力を借りられること”と述べている1).その理由として,人が成長するために自分を観察しようとするとき,どうしても視野が狭くなるからだと書かれている.現在は「総合診療専門医」の研修プログラムが始まろうとしている転換期にあり,研修環境が発展途上にあるからこそ,若手医師が自身の周囲にネットワークを築き,互いに力を貸し借りできる関係を構築しておくことが成長していくためにより大切なことだろう.

交流を超えた交流会をめざして

例年の交流会では,ワールドカフェ形式で自由に会話を楽しんでもらうことに終始してきた.しかし,それだけでは時間制限もあるため表面上の関係しか築けない傾向があり,多くの共感を得た若手の悩みでも解決にまで結びつかないことが多かった.そこで,今回はより個別性の高い話題を共有できるよう配慮した.

各テーブルに「生涯学習と教育」「臨床と研究」「国際交流」「医学以外とライフデザイン」という4つのテーマを定めた.参加者は好きなテーマのテーブルに座り,各テーブル6名程度で,ファシリテーターが適宜質問を投げかけながら計60分間にわたって会話を進めた.ファシリテーターには,グループインタビューで対象のニーズを引き出し,価値を生み出すことに長けているマーケティングの専門家からあらかじめインタビューのコツをご指導いただき,テーマの深め方を訓練していただいた.その結果,専攻医や若手医師が直面している切実な声が聴かれた.例えば,下記のようなテーマについて議論がなされた.

若手医師二次会の様子
  • 人的リソースの少ない臨床研修環境でも適切なフィードバックを受けるためにどうしたらよいか
  • プライマリ・ケア領域の臨床研究を行うために時間と指導医をどのように見出すか
  • 総合診療の魅力,働き方や研修の実際を後輩にどのように伝えていくべきなのか

当事者として悩んでいる若手だからこその視点で議論を深め,問題点の発散だけではなく,具体的な解決策を探るに至った.今後は今回の議論を踏まえて,学会を中心に形成されたネットワークの力を活かしつつ,1つでも解決に導くべく行動していく必要があるだろう.そして,その夜は二次会で楽しく盛り上がった.議論を交わした仲間同士だからこそ絆が深まり,お酒の味も格別に感じた.

引用文献

1) 「なぜ人と組織は変われないのか -ハーバード流 自己変革の理論と実践」(ロバート・キーガン,リサ・ラスコウ・レイヒー/著),英治出版,2013

その患者,CKD併存かも.腎機能を意識した診療できてますか?

レジデントノート増刊 Vol.26 No.14
いま身につけたい CKD患者を診るチカラ 腎機能を診るチカラ
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西脇宏樹/編