病院総合医で身につく能力,業務の魅力 原田 拓(昭和大学病院 総合診療科),森川 暢(JCHO 東京城東病院 総合内科) レジデントノート2018年2月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 病院総合医とは 病院総合医はその名の通り病院で働く総合診療医です.アメリカでは病棟専属の内科医であるホスピタリストが知られていますが,日本の病院総合医は病棟にとどまらず外来・救急と幅広い分野で活躍していることが特徴になります.日本プライマリ・ケア連合学会の病院総合医委員会のホームページに詳細が載っていますので,ぜひご覧ください. 病院総合医の能力 病院総合医として研鑽を積むことによって,身につく能力は主に4つあると考えています. 1つ目は広く,深く診療する能力です.まさに『Dr.HOUSE』のような難しい病気の診断を求められたり,幅広い内科一般の知識を身につけられたり,急性期管理に精通できたりと毎日新たな学びがありとても充実しております.診断がよくわからない症例やmultimorbidityの症例はまさに病院総合医の力の発揮どころです.2つ目は心理社会面へも配慮できる能力です.病院で働いていても生物学的な対応だけでは解決できない問題も多くあるため,倫理的な配慮も行います.家庭医療の理論は病院であっても役に立つと日々実感しています.例えば,非常にコモンな疾患に誤嚥性肺炎があります.しかしそのマネージメントはただ抗菌薬で治療する…ではなく,背景疾患,家庭や家族の状況,advanced care planning(ACP)など実は非常に奥が深く病院総合医が専門性を発揮できる疾患です.3つ目の要素は他科や他の医療従事者との関係を調整する能力です.医師として研鑽を積むには医学知識の習得も必須ですが,医学知識以外の仕事に必要な能力,いわゆるノンテクニカルスキルの習得が重要です.ネゴシエーション,コンフリクトマネジメント,マネジメント,リーダーシップ…こういったさまざまなノンテクニカルスキルを習得できるのも病院総合医ならではの醍醐味です.4つ目の要素は病院医療の質を改善する能力です.私は深部静脈血栓症予防のワーキンググループと末期患者の看取りのワーキンググループに所属させていただいており,病院全体の診療の質の向上に取り組んでいます.病院によっては感染対策チーム,栄養サポートチーム,医療安全などの業務をしている病院総合医もいます.こういった科を越えた視点で病院全体に貢献できるのも病院総合医ならではといえます. 日本プライマリ・ケア連合学会での活動と病院総合医の未来 若手病院総合医チームの仲間〔左端が著者(原田)〕 私は日本プライマリ・ケア連合学会の専門医部会若手医師部門で若手病院総合医チームとして活動しています.全国の仲間で集まり,病院総合医にしかできない勉強会を開催し,病院総合医の向かうべき方向について,夢を語り合っています.高齢化社会となったいま,幅広い能力をもつ病院総合医の活躍できる場がどんどん広がっています.病院総合医の時代がきていると言っても過言ではありません.一緒にこれからの病院総合医を盛り上げてくれる方をお待ちしております.