総合診療医の未来とその可能性 [最終回] 菅家智史(福島県立医科大学 医学部 地域・家庭医療学講座) レジデントノート2019年3月号掲載 所属はレジデントノート掲載当時のものです [SHARE] ツイート 総合診療医は何者か? 「菅家先生はいったい何者なんだい?」 2007年春.専門研修の一環で公立病院に着任した私に,ベテラン医師が声をかけてくれた.興味をもってくれたことがとても嬉しくて,私は熱っぽく語った.その医師はキョトンとした表情をしつつ「応援するよ」と笑顔で応えてくれた. あれから11年.日本専門医機構による新専門医制度で,総合診療専門研修がスタートした.内閣がつくる骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)2018には「総合診療医の育成を促進する」1)という文言が入った.総合診療医に追い風が来ているのは間違いない. 総合診療医の多様性 そんな現在でも「総合診療医とは何か」を言葉で説明することは難しい.日本の総合診療医は数が少ないにもかかわらず多様性が大きい.60回以上に及ぶ本連載に多彩な総合診療医たちが登場してきたように2),ある総合診療医に会って「総合診療医ってこういう医師なんだ」と知ったつもりが,別の総合診療医に会うと全然違うことをやっていたりする. この多様性こそ総合診療のおもしろさだ.総合診療医として,状況に合わせて自分の役割を変化させ,他科ではやらないことに取り組んだり,医療以外の分野とコラボしたり,まちづくりにかかわったり.その場の気づきやニーズに対応することで,総合診療医の多様性が形作られている. 総合診療医のクリエイティブさ この多様性を生み出すのが総合診療医の「クリエイティブさ」だ.「もしあなたがハンマーしかもっていなければ,すべては釘のように見える(If you all have is a hammer, everything looks like a nail.)」という英語のことわざがある.人間は問題に直面したとき,自分がもっている手段で問題を解決しようとする.総合診療医は研修を通じて多くの医学分野,手技,治療法に接し,自分で対応しきれないところは他職種と連携することを学ぶ.ハンマーだけでなくいろいろな「道具」をもっていることで,新たな発想を生み出して複雑な問題に対応していくことのおもしろさが,総合診療医のやりがいにもつながっている.ロボットやAIが発達して医師の役割やニーズが変化してくるこれからの医療においても,総合診療医がどのように変化していくのか楽しみだ. 「総合診療医ってどういう医師ですか?」「多様性が高くてクリエイティブな医師です」 うーん,これでもまだ伝えきれてない.だから総合診療はおもしろい! 文献 経済財政運営と改革の基本方針2018. P.58,内閣府:https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf(2019年1月閲覧) 総合診療はおもしろい!.レジデントノートHP,羊土社:https://www.yodosha.co.jp/rnote/soushin/index.html(2019年1月閲覧)