編集部レポート

日本救急医学会「第4回 臨床研修医・医学生のための救急セミナー」

開催日:2015年7月18日  会場:東京医科歯科大学

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日本救急医学会が,「臨床研修医・医学生のための救急セミナー」を開催した(企画:学生・研修医部会設置運用特別委員会).本セミナーは,救急の面白さに触れ,救急に興味をもつきっかけを提供することを目的としている.4回目となる今回は,医学部1年生から2年目初期研修医まで,約50人が参加した.代表理事の行岡哲男先生(東京医科大学)による開会挨拶のあと,総合司会の島崎淳也先生(大阪警察病院)の進行で,症例クイズ大会,ワークショップが行われた.

>みんなで考え,みんなで学ぶ! ドクターE

症例クイズ大会の様子

症例クイズ大会の様子

「救急医 ドクターE!!」(emergencyのE)と題し,多発外傷,集中治療,ERの3つのテーマをもとに,救急症例クイズ大会が行われた.学年が近い6人程度でグループがつくられ,診察の流れに沿って呈示される問題に対する解答を皆で協力して考える“グループ対抗戦”.医学生チームにとっては少々難しい問題もあったが,各グループ専属のファシリテーター(現役救急医)がヒントや質問を出すことで,答えへと導いていた.問題がすすむにつれグループ内でのディスカッションも白熱し,多発外傷の症例を呈示した松村隆志先生(大崎市民病院)が正答率の高さに感心する場面もあった.

クイズの答えを考えるだけでなく,症例の解説も充実していた.集中治療の症例を担当した松本徳彦先生(沖縄県立宮古病院)による敗血症の診断や合併症の治療などの実臨床的な説明にメモをとる参加者も多く,学びの多い時間となっていたようだ.さらにスライドに掲載される解説をファシリテーターの先生が補足することで,グループごとにより理解を深めることができていた.

また,ERの症例を呈示した渡邉紀博先生(名古屋掖済会病院)は,2〜3症例を同時に診なければならないという設定で,現場のERさながらの臨場感たっぷりのプレゼンを展開した.セッション終了後,ファシリテーターの舩越拓先生(東京ベイ・浦安市川医療センター)は「症例検討を通じて,ERの面白さを知ってほしい」とコメント.救急に興味をもってほしいという企画者の熱い気持ちが伝わってきた.

救急医のキャリアは十人十色 〜ワークショップでキャリアパスを考える

続いて,「救急医のキャリアパス」と題したワークショップが行われた.テーマは「自分のキャリアパスを考える」.司会の増井伸高先生(札幌東徳洲会病院)の進行のもと,5名の救急医の先生方がそれぞれのキャリアを紹介し,それを踏まえて参加者がグループ内でキャリアパスについて悩んでいることを話し合った.

質疑応答では,医学生から「救急医をめざしているが,初期研修病院をどういった視点で選べばよいのか?」「留学のメリットを教えてほしい」,といった疑問が寄せられた.一方研修医からは,新専門医制度に対する戸惑いの声なども聞かれた.明確なキャリアプランをもつ参加者は少ない様子で,医師として働くうえでの悩みや不安に,ファシリテーターが親身になって答えている姿が印象的であった.

「医療」だけでなく「医師」を伝える

閉会挨拶は,委員長の太田祥一先生(東京医科大学/恵泉クリニック)の「施設の垣根を超えて仲がよいのも救急科の魅力.さまざまな救急医と知り合うことで,将来の選択の幅を広げていただければ」とのメッセージで締めくくられた.

本セミナーに参加した研修医からは「クイズ形式でさまざまな症例を学ぶことができ,知識が増えた」「多種多様なキャリアをもつ先生方の話を一度に聞くことができ,将来のビジョンが広がった」などの感想が聞かれた.医学知識を学ぶだけでなく,医師としての働き方を考えることができる有意義な時間となったようだ.全国で活躍する多くのベテラン救急医の生の声,生きた体験を聞くことで,救急の魅力を知り,救急に興味をもつよい機会となったことだろう.

(編集部/加藤里英)