編集部レポート

Chiba Clinical Skills Boot Camp 2017

開催日:2017年2月26日(日)  会場:京成ホテルミラマーレ

  • [SHARE]

「Chiba Clinical Skills Boot Camp 2017」は,NPO法人 千葉医師研修支援ネットワークが主催した初期臨床研修医向けセミナーである(共催:千葉大学医学部附属病院).同団体は千葉県内の病院の協力のもと,県内の若手医師育成活動の一環として様々なセミナーを開催している.今回のセミナーでは,“研修医に求められる身体診察スキルを集中的に研鑽する”ことを目指してプログラムが組まれ,主に千葉県内で活動する30名の研修医が参加した.

きめの細かい直接指導でスキルアップ

会場には4つのブースが設けられ,眼底診察・神経診察・頭頸部診察・筋骨格診察,それぞれの診察スキルを教わる.1ブースにつき40分のセッション.8名程度のグループに分かれ,ローテーションをして4つすべてを学ぶ構成である.

各セッションは,千葉大学医学部附属病院の先生方が講師となり,それぞれ2名の指導医により進められた.また,生坂政臣先生(千葉大学医学部附属病院総合診療科),塩尻俊明先生(国保旭中央病院総合診療内科),森 隆浩先生(亀田総合病院総合内科),鋪野紀好先生(千葉大学医学部附属病院総合診療科)など,本企画に携わり後半のシンポジウムに登壇する先生方も,各ブースを巡回して参加者に声を掛け,直接指導していく.参加者にとって質問しやすく,フィードバックを受けやすい環境になっていた.

見て,聞いて,触って,診察のコツを学ぶ

神経診察のセッションでの一コマ.伊藤彰一先生から打腱器の持ち方を教わる.
神経診察のセッションでの一コマ.伊藤彰一先生から打腱器の持ち方を教わる.

生坂先生が開会式で「身体診察のコツが必ず習得できるプログラムを考えました」と話された通り,各セッションは充実の内容.眼底鏡の使い方,腱反射,甲状腺の触診,肩痛の診察などについて,通り一遍の方法だけでなく,直接指導でないと学べないポイントが次々と伝授された.動かし方や角度がずれていると,指導医からその場でフィードバックがあり,その場でポイントを掴めている様子だった.

また各セッションには千葉大学医学部SP会および千葉大学医学部生から模擬患者さんも参加.実際の診療を想定した練習がすぐにできる寸法である.実践時には参加者の顔つきも引き締まり,教わった診察のコツを慎重に試していた.模擬患者さんからのフィードバックでは,「診察しながら無言の時間が続くと,何かあるのかと心配になる」などの率直な感想が話され,参加者は熱心に耳を傾けた.

身体診察スキルの向上に近道はない

各セッション後に行われたシンポジウム『ジェネラリストに聞く 身体診察スキル獲得の秘訣』では,生坂先生,塩尻先生,森先生,Daniel Salcedo先生(千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター),鋪野先生が登壇.身体診察スキルの効果的なトレーニング方法などについて,意見が交わされた.

どの先生からも,たくさんの患者さんをみることは重要なこととして挙げられ,『初学者こそ道具にこだわって』『経時的変化に気を配ることはとても大事』『聴診は,疾患名が明らかな患者さんの音を聞くとよい』『身体診察には書籍・動画で伝えきれない,暗黙知がある.熟練医をそばで見て,実際に行って身につけるのが何より大切』など,短い時間ながらも熱いアドバイスが送られた.

“OSCE以降,トレーニングをする機会がない”との声もある身体診察.生坂先生は「身体診察は“医師の暗黙知”の部分がとても重要で,このようなセミナーで,ぜひ伝えたい.今後も千葉県内の病院で協力しあって,千葉の医療を盛り上げたい」と話され,今回のセミナー実施責任者である鋪野先生は「これからも継続して開催したい」とのこと.地域で医師を育てていく試みは,各地で活発になっている.その1つとして,今後の取り組みにも目が離せない.

(編集部 田中桃子)