第1回 科研費が欲しい! 研究費の概要と審査のしくみについて ~
前述の通り科研費は採択率が20~25%くらいだが,それでも民間の研究助成に比べて採択率は高いし,採択数も多い.しかも助成金額が2~3年間で300万円以上と,民間の助成金に比べて額も大きく,期間も長い.民間の研究助成は採択率が平均5~15%,助成金額は100万円が相場で,期間も1年間がほとんどである.やはり科研費は研究資金の基礎としての役割が非常に大きい.
しかし,連載第1回から暗い話題で申し訳ないが,科研費の状況は年ごとに厳しくなっている(図1).平成20年度の科研費の採択状況が公表されているが,予算額の伸びにもかかわらず,新規応募分の採択率は過去10年間で最低で,春の採択時の段階では20.7%だった(秋の追加採択のあとで最終的に22.7%に上昇したけれど,これでも最低レベル).かつては4人に1人と言われていた採択率が,5人に1人のレベルにまでなっている.
これは年間85,000件くらいで推移していた新規応募件数が,平成17年頃から上昇して,平成20年度には過去最高の104,000件になったからだ.その間,新規採択件数は20,000~24,000件のままだったので,採択率が徐々に低下しているのだ.各大学は研究資金獲得に力を入れているので今後も応募件数は増加するだろう.
厳しい話だけでなく希望もある.平成21年度の科研費は38億円(直接経費19億円,間接経費19億円)の予算増加が認められており,特に基盤研究Cと若手研究Bの予算が増額する.科学技術振興は国の将来の基礎と位置付けられているので,今後も研究費の増額が期待できるかもしれない.
※データ・年次などは連載当時のものです.現在とは異なる場合があります
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行