ここでは,実験医学2009年7月~11月号に掲載された連載より,初めて科研費を申請する研究者,慣れていない若手研究者へ向けて,科研費の概要・応募戦略の立て方・申請書の書き方などをご紹介いたします.本連載を元に,具体的な実例やポイント,最新の内容などを大幅に書き加えた単行本『科研費獲得の方法とコツ』もあわせてご覧下さい.(編集部)
第1回 科研費が欲しい! 研究費の概要と審査のしくみについて
この連載では研究費のなかでも,科学研究費補助金(いわゆる科研費)を獲得するための申請書の作成方法を書いていく.
毎年10月になると次年度の科研費の申請がはじまる.言うまでもなく科研費は研究費の基礎として非常に重要だ.科研費に採択されるか,採択されないかで,研究計画やキャリアに大きな影響を与える.ところが科研費の採択率は毎年約20~25%という4人に1人しか採択されない狭き門である.科研費にはぜひ採択されたいと誰もが思うが,世の中には「科研費に通る申請書の書き方」などのガイドブックがあるようで,ない.各個人,各講座でのテクニックがあり,それはほとんど門外不出になっている.毎年春になって,その年の科研費の審査結果が発表されると,よく採択される人がどの大学にも研究所にも必ずいる.彼 (彼女)らはいったいどのような申請書をつくっているのだろう?
この連載はそういった疑問をもっていろいろ調べた結果をもとに,久留米大学内で科研費申請の資料集としてまとめたものが基本になっている.昨年,その内容をブログで公開したところ,科研費申請の時期にはアクセス数が1日1,000件を超え,申請書作成に頑張っている研究者が多いことを実感した(編集部注:ブログは現在は閉鎖).そのような研究者の力となるべく,この連載では前記の内容に加え,最新の情報も盛り込んだ.
私のこれまでの科研費の戦績は平成21年度の結果を含めて15勝10敗の採択率60%である.落ちた10回のうち,9回は特定領域研究(新学術領域1回を含む)で,計画班で応募した6回,および個人での応募の3回が不採択だった.あと1回落ちたのは挑戦的萌芽研究である.幸いにも,基盤研究に応募した申請課題はすべて採択されている.また,私のラボのスタッフ2名も継続して科研費を貰っている.申請時には彼らの申請書を10回くらいはチェックする.平成20年度に私がチェックした合計6人の申請書で,採択されたのは4件だった.また私はこれまで科研費の一次審査,二次審査を実際に行ったことがある.
以上の経験から,この連載を書くことをお許しいただきたい.
※データ・年次などは連載当時のものです.現在とは異なる場合があります
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行