第1回 科研費が欲しい! 研究費の概要と審査のしくみについて ~
科研費の審査には一次審査と二次審査がある.一次審査は書類審査で,二次審査が審査員の合議による審査だ(図2).
一次審査では提出された科研費の申請書について,若手B,基盤C,挑戦的萌芽では3名の審査員が,若手SとAや基盤S,A,Bでは6名の審査員が5段階評価の総合評点を付ける.最高が5点,最低が1点で,小数点以下はない.また5点から1点までの評点区分で,評点分布の目安が決められている.5点が10%,4点が20%,3点が40%,2点が20%,1点が10%だ.採点した結果はほぼこの分布に従って人数調整される.だから審査員は,いい申請内容のものがなくても必ず5点を付けなければならないし,内容が悪くなくてもどれかの申請課題には1点を付けないといけない.
ただし審査員によって点数の付け方に多少のバラツキがあるので,採点の集計においては,審査員による採点の偏りを避けるために統計処理され,小数点以下までの点数が付く.
評定基準には(1)研究課題の学術的重要性・妥当性,(2)研究計画・方法の妥当性,(3)研究課題の独創性および革新性,(4)研究課題の波及効果および普遍性,(5)研究遂行能力および研究環境の適切性などの5項目で4段階の評点を付けるが,これらの点数はあくまでも参考で,総合評点の点数とは別である.つまり,評定基準の合計点数がそのまま総合評点に反映されるとは限らない.あくまでも総合評点が重要である.
二次審査では審査員が日本学術振興会の本部の一室に集まって,一次審査の点数をもとに議論しながら採択を決める.審査員の合計点数が,採択予定件数内の上位8割くらいまでの申請課題はそのまま採択され,1~2割の当落線上の申請課題について,話し合って採択するものを決定する.ただし実際のところ,合議によって一次審査の合計点数を逆転して採択されるものはごくわずかで,ほとんど一次審査の結果がそのまま反映される.採択される総合評点の点数だが,一次審査の総合評点が4, 4, 4以上ならまず採択されるが,4, 3, 3が当落線上だろうか.総合評点4が1つは絶対に必要である.
逆転があるのは,審査員によって極端に点数の偏りのある場合,例えば3名の審査員の総合評点が4, 4, 1とか5, 5, 2とか,1名の審査員だけの点数が他の2名に比べて大きく(たいてい低く)外れているときに,申請書に特に問題なければ,2名の高い得点が考慮されて逆転採択になることがある.
科研費の審査はこのような審査システムになっている.申請書を作成するときに忘れてはいけない重要なことは,科研費は審査員相手に,審査員のために書くものだということである! 論文のように大勢の人に読んでもらうためではなく,あくまでも3名か6名の審査員のために書くものであることをくれぐれも忘れずに.具体的なポイントは今後の連載のなかで紹介していこうと思う.
※データ・年次などは連載当時のものです.現在とは異なる場合があります
児島将康/著
定価 3,800円+税, 2015年8月発行