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UJAだより

学部卒業後の留学ー留学先選びのポイントおよび手続きの注意点

UJA 水田勝利(University of Florida)

外での研究を通して,ネットワークや研究に対する視野が広がり,これまでの失敗や苦労にも笑いや意味を見出せることがある.新たに挑戦したい研究テーマを見つけることもある.

図4

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私は学部を卒業後,博士課程4年目となる現在まで海外で研究をしており,海外留学してよかったと感じているが,海外留学を実現するまでには悩みや迷いもあり準備もとてもたいへんであった.今回は,留学までの道のりの第一歩として,留学先を決めるために考慮すべきポイントと情報収集方法について,自身の経験に基づいて紹介したい.

筆者は環境系の学部2年次終了後,1年間米国に留学した.将来はどんな研究者とも対等に英語で議論できるようになりたいと,海外大学院の受験を志すようになった.その際,準備を進めるうえで特に考慮したポイント5点をまず紹介したい.

①目的:なぜ海外に行く必要があるのか,研究者になって何がしたいかについてアイディアを集め,自分の将来像をイメージした.具体的に大学院で行いたい研究内容をまとめた.②時期:日本で博士号を取得して海外に行くか,海外で博士号を取得するか,いったん企業に入ってから海外大学院をめざすか,自分にとって最も実現可能な手段を検討した.なお,米国だと修士号なしで博士課程に直接進学することができる.③資金:奨学金は日本で賄うか,または現地で賄うか,ローンを借りるかどうかも情報を収集・検討した.④手続き:国外で就職する場合,居住および就労が可能な許可書(ビザ等)の取得が必要である.また,進学においても指導教官からの受け入れ許可や,家族からの許可も必要になることもある.⑤研究環境:興味がある研究を行う設備があるか,指導教官はどんな人か(後述)など,これらの5つのポイントを重要と考えた.

実際に行った準備は3つのプロセスに分けられる(図4)A:オンライン検索,B:現地調査,C:応募資料の準備である.

まずはオンライン検索で,行きたい留学先をある程度絞り込む必要がある(図4A).興味のある論文や書籍から研究室を主宰するPIにあたりをつけ,近年どんな論文を何本出しているのか調査した.次に学生を募集しているかどうかを一人ひとりメールで問い合わせた.その際に研究プロポーザルや履歴書,過去に出版した論文等があれば一緒に送るとよい.次に研究を行う十分な研究費の有無や大学/学部が提供する奨学金を調査した.なお留学資金に関しては筆者の場合,日本学生支援機構から給付型の奨学金を利用して,博士前期(修士)および後期(博士)課程を過ごした.また後期課程では,これに加え学部からTeaching Assistantとして生活費を得ることができた.受験資格にも注意が必要である.学部の成績(4段階制)/英語テストの結果/Graduate Record Examinationsのテスト結果の足切り点にも注意しなければならない.テスト結果が足切り点に届いていなくても,条件付き入学(English Language Institute等の英語学校に行くことを条件に入学)が許可される場合もある.5〜10箇所程度の研究室に絞った後,図4Aの項目をリスト化して,応募に必要な書類の準備状況や応募状況を頻繁に確認した.

情報収集においてウェブの情報は限られているため,海外受験志望の方は可能な限り候補者/現役生/卒業生/大学職員に会うことをおすすめする.その際,筆者は図4Aの情報に加えて,以下の内容を可能な限り調査した(図4B).1)月に何回研究に関するミーティングがあるか,大学院生を何人指導した経験があり,学生は平均何年で卒業しているか,2)食事に行くことができる関係か,3)他の教授やスタッフとは良好な関係か,4)指導教官が移籍/退職/sabbatical leave(研修のための長期休暇)する可能性はあるか,5)日本食レストランやマーケットの有無,気候は厳しくないか.特に留学生と教官との関係を注意して情報収集するべきだろう.教官との相性は,卒業できるかどうかにかかわる最重要因子であると経験上お伝えしたい.

最後に応募書類の種類について言及する(図4C).どの国でも1)~5)は必ず提出しなければいけない.1),5),6)が高ければ入学助成奨学金を大学から提供される場合がある.

以上,研究室選びから海外大学院受験の準備について私見を述べた.ここでは書き足りなかったことが多くあるが,前述した5点(目的・時期・資金・手続き・研究環境)を意識しながらキャリアプラン・ディベロップメントを行うと,海外での研究生活がより充実したものになるだろう.

最後に,日本科学の発展および世界中の日本人研究者をサポートするUJAメンバーとしてともに活動する仲間を募集している.何か疑問があればUJAまで気軽に連絡してほしい.学生や研究者といった立場,大学や企業といった所属機関に囚われず,皆様からのお問い合わせをお待ちしている.

2020年5月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2020年5月号 Vol.38 No.4
GWASで複雑形質を解くぞ!
多因子疾患・形質のバイオロジーに挑む次世代のゲノム医科学

鎌谷洋一郎/企画
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