病原体の90%以上は粘膜から侵入することから,粘膜局所での免疫を誘導するワクチンがあれば非常に効果的なはずである.しかし,インフルエンザワクチンにみられるように一般的に不活化ワクチンの筋肉注射で粘膜面の免疫を誘導するのは難しい.近年同定された組織常在性記憶T細胞(tissue-resident memory Tcells,TRM)は,末梢組織に常在し再循環しないCD8陽性記憶T細胞の一集団を形成している.ウイルスなどの細胞内病原体感染細胞を検知すると炎症性サイトカインを急速に発現し,第一線の末梢組織での感染防御に重要な役割を果たしているだけでなく,腫瘍浸潤TRM数がさまざまな上皮性の腫瘍で良好な予後と関連しており腫瘍免疫監視の主力細胞群でもある.
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