腸管は,複数種の上皮細胞がタイトジャンクションでつながった構造をしており,栄養や水分の吸収,細菌や食物からのバリア,免疫応答,腸内細菌との共生,といったさまざまな機能を果たす.バリア,免疫,共生機能の不全は,潰瘍性大腸炎やクローン病に代表される炎症性腸疾患の原因となるが,詳細な発症メカニズムはまだ不明である.腸管上皮は組織と外界とが接する最前線であり,上皮細胞表面に発現するさまざまな糖鎖がその相互作用の制御に関与する.さらに粘液の主成分であるムチンには大量の糖鎖が含まれており,糖鎖が腸管機能の恒常性に重要な役割を果たすと考えられる.実際に,上皮細胞内のFUT2により合成されるフコース含有糖鎖や,ムチンに大量に付加されるO- GalNAc型(ムチン型)糖鎖は,粘液による微生物の排除や腸管免疫と密接なかかわりがあることが報告されている.
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DOI:10.18958/7031-00004-0000180-00