がんという病気は,多くの場合,ある日突然,あまりにも理不尽な形でわれわれの前に姿を現し,かかわる人々の人生を大きく変えてしまう.過去30年以上にわたって日本人の死因の第1位を占めるがんとの闘いに際し,本邦では「がん研究10か年戦略」1)が 策定され,そのなかでは,新規薬剤,医療技術の開発に加え,がんの本態解明や予防,早期発見に向けた研究の重要性が提唱されている.そもそもがんという病気は,いつどこでヒトの身体のなかに生じ,どのように育ち,その一生を送っているのだろうか.特にヒトの身体のなかにその存在が見つかるまでのがんの前半生は,がん研究が大きく進展を遂げた現在においてもなお多くの謎に包まれている.
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DOI:10.18958/7031-00004-0000182-00