動物にとって食欲は生存に必要不可欠な生理機能であり,その制御機構は種間で広く保存されている.この機構ではまず,視床下部弓状核(ARC)に存在する摂食促進性のAgRP神経(ARCAgRP.以下,摂食促進性神経)と摂食抑制性のPOMC神経(ARCPOMC.以下,摂食抑制性神経)が神経ペプチドであるNPYとαMSHをそれぞれ放出し,投射先である視床下部室傍核(PVH)のMC4R神経(PVHMC4R.以下,投射先神経)にシグナルが入る(図2).このシグナルはGi共役型のGタンパク質共役型受容体(GPCR)であるNPY受容体(NPYR)と,Gs共役型のGPCRであるαMSH受容体(MC4R)を介している.よって,拮抗する2種類の入力が投射先神経内ではcAMP量として統合され,摂食抑制性の投射先神経の活動を調節すると考えられる.しかし,この概念は技術的な障壁のために証明されていなかった.
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DOI:10.18958/7691-00004-0001888-00