- [SHARE]
-
ウエスタンブロッティングでの定量の概要とポイント
実験手法の概要
目的のタンパク質の発現レベルを,特異抗体を用いて検出し,そのシグナルを定量することによって相対的に半定量(比較定量)することが可能である.また,目的タンパク質の既知濃度の標準品があれば,検量線を作成することによって絶対定量も可能となる.ただし,ウエスタンブロッティングでは多くの操作を経るために,正確な半定量を行うことは意外に難しい.
実験手法の流れ
- 電気泳動(SDS-PAGE)〜転写(転写の概要とポイント参照)
- ブロッキング〜抗体反応(一次抗体,二次抗体)※〜検出(検出の概要とポイント参照)
※目的タンパク質への抗体反応と,ローディングコントロールへの抗体反応を一緒に行う.
- シグナルの取り込み・計算(X線フィルムの場合はスキャナにてtiffファイルとして取り込み,解析ソフトで解析する.蛍光スキャナやCCDカメラ等のイメージャーでの取り込みの場合は,通常,専用の解析ソフトが付帯しているので,それを用いる.)
ウエスタンブロッティングはどうしても定性的な解析手法なので,正確な定量はできませんが,本コンテンツで述べるような工夫をすることによって定量解析も可能になります.ただし,タンパク質発現レベルの変動の幅が1.5倍以内の場合は評価は困難でしょう.2倍以上大きく変動する場合は試みる価値があります.
成功のポイントは転写ムラをなくすことと,弱めのシグナルを取ること,そして,最低3回実験を行い(n=3以上),有意な変化を捉えているかどうか統計的に解析するのが望ましいです.
ウエスタンブロッティングのQ&A一覧へQ32 定量に適した検出法
TOP
プロフィール
- 森山 達哉(Tatsuya Moriyama)
- 京都大学農学部食品工学科卒.同大学院農学研究科修士課程,博士課程ののち,京都大学食糧科学研究所助手 等を経て2005年に近畿大学農学部講師,2008年准教授.その間,1996年米国スタンフォード大学招聘研究員(1年間).毎日多くの元気な学生たちと一緒に,食品成分の生理機能性(特に脂質代謝への影響)と安全性(特にアレルゲン性)に関する研究を行っている.基礎研究だけでなく,社会の役に立つ「アウトプット」を意識した研究を進めています.
- <著作>
-