DIRECT研究会(Diagnostic and Interventional Radiology in Emergency, Critical care, and Trauma)は,救急診療における画像診断の質の向上,およびIVRの普及と質の向上により救命率の改善に寄与することを目的とした研究会である〔代表幹事:船曵知弘先生(済生会横浜市東部病院救命救急センター)〕.2011年の設立以来,画像診断(内因性/外傷)やIVR教育のためのハンズオンセミナーを精力的に開催している.
この度,34回目となるセミナーが,日本救急医学会総会前日の10月27日,博多にて行われ,若手救急医から指導医まで幅広く約50名が参加した.
今回のテーマは「外傷診療」で,下記の3題で,それぞれにレクチャーと症例検討(1例ずつ)が行われた.
第1部のレクチャーでは,金史英先生(日本医科大学付属病院高度救命救急センター)が,外傷初期診療における全身CTのエビデンスを整理された.全身CTの撮影やtrauma roomにCTを設置することにより診断関連時間が短縮され重症症例には有用であること,撮影時間を短くするだけではなく読影を含めたワークフローの改善が重要であること,全身CT施行基準の私見などが述べられた.
第3部では,初療室にIVR-CTを設置している大阪府立急性期・総合医療センター高度救命センターの藤見聡先生から,初療ベッドから患者さんを全く移動させることなく,CT撮影,経カテーテル的止血術や開腹止血術ができる新しいトラウマワークフローや,そのメリットが紹介された.
また,第1部の症例検討では,“高エネルギー外傷でドクターヘリにてFAST negative,non-responder”の症例が呈示され,どう判断しアプローチしていくか,胸部や骨盤の止血術や頭蓋内血腫除去術の優先順位,CT撮影のタイミングなどが議論された.施設の設備やマンパワー,患者さんの状態によって異なり,JATEC通りにいくことばかりではなく,エビデンスの十分に確立していないところである.多数の施設のやり方が聞ける機会として,お互いに尋ね合い,助言しあうディスカッションが印象的であった.
さらに読影に関しては,救急と放射線の双方を専門とする本会幹事の先生方が,実際に画像を読みながら,どう読影するのか,どうすれば予後が予測できたのかを示してくださる.治療方針を考えながら読影できる放射線科医の思考プロセスを学ぶことができるのは人気の理由の1つのようだ.
なお症例検討にあたっては,クラウド型画像viewerを使用して,参加者全員がそれぞれのノートパソコンやタブレット端末にて大量の症例画像を自由に見られることも画期的であった.
エキスパートの思考プロセス・読影プロセスを間近で学べる会である.プログラム終了後も一部の熱心な受講生が残り,白熱した議論が続いた.今後のセミナー情報は,会のホームページ(http://direct.kenkyuukai.jp)で紹介されるので,チェックしてみてはいかがだろうか.
(編集部/保坂早苗)