開催日:2015年10月17日 会場:東京医科大学病院
日本救急医学会が,初の試みとして「全国医学生CPR選手権大会」を開催した(企画:学生・研修医部会設置運用特別委員会).医学生がCPR(CardioPulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)の知識と腕を競い合うことで,より質の高いCPRについて考え,救急医療の質のさらなる向上につなげることを目的としている.今回は8月下旬に地方予選を勝ち抜いた医学生の15チーム75名が,CPRの頂点をめざすべく出場した.
太田祥一先生によるガイドラインの解説
北海道から九州まで,全国各地の15の学生団体,サークルから医学生(1〜6年生)が集まった.1チーム5人で構成されている.チームごとにお揃いのTシャツやスクラブを身に纏い,入場行進の音楽とともに開会した.新井隆男先生(東京医科大学八王子医療センター 救命救急センター)による司会で,大学やサークルの紹介,ご当地自慢満載の自己紹介の後,弘前大学の学生による津軽弁での選手宣誓があり,終始和やかムードだった.
開会式の後,太田祥一先生(東京医科大学/恵泉クリニック)による『JRC蘇生ガイドライン2015』の解説があった.2010年のガイドラインとの変更点を含め,胸骨圧迫の深さやテンポなどを説明.例えを用いたわかりやすい解説に,学生たちは熱心に聞き入った.
試験前の練習風景 練習も真剣そのもの!
決勝戦は15チームが5つのブースに分かれて行われる.各チーム5人のうち3人が成人CPRを担当,2人が小児CPRを担当し,それぞれ筆記試験,実技試験の順に行う.合計220点満点で採点され,判定基準はJRC蘇生ガイドライン2010に基づく.川本英嗣先生(三重大学医学部附属病院 救命救急センター),萩原佑亮先生(東京都立小児総合医療センター),上杉泰隆先生(東京都立小児総合医療センター)が審査を担当した.「実際の医療現場でやっている」というイメージをもって行うことも重要な採点のポイントとなった.
本番直前までシミュレーターの人形を触ってリズムを確認したり,空気の入り具合を確かめるチームが多く,緊張の高まりが感じられた.他校が練習している様子を目線を低くして熱心に観察し,作戦会議するチームも見受けられた.
決勝戦の筆記試験が開始されると同時に,会場は一気に静まり返った.難しい問題も多かったようで,思い通りに解けず悔しそうな表情を浮かべる参加者もみられた.筆記試験の後すぐに行われる実技試験では,日頃の練習の成果を存分に発揮すべく,各チーム真剣な表情で心肺蘇生に取り組んでいた.「(空気)入ってます」「高さOKです」「次,交代します」などの声掛けもあり,チームワークの強さが伺えた.実技試験終了の合図とともに拍手が湧き起こる.さらに実技試験終了後には,チームごとに救急医によるフィードバックがあり,換気回数や空気の入り具合,交代のタイミングなどについて説明があった.
小児CPRの実技試験
コーヒーブレイクを挟んだあとの閉会式で,フィードバックおよび成績発表が行われた.総合優勝は帝京大学「ACLS研究会」,2位は三重大学「きゅうめい部」,3位は長崎大学「FLAN」.実技試験の審査を担当した萩原佑亮先生は,「成人CPRは差がつかないほど出来がよい.小児CPRが難しかったようだった」と学生のレベルの高さに感心していた.太田祥一先生は「参加校はまだまだ増えると考えている.今大会がCPRを学び考えるきっかけとなり,より多くの医学生に実践力を身につけてもらいたい.CPRを実践できる学生が増え,さらにはその学生たちが一般の方にもっとCPRを広めていく契機となれば」と,次回開催への意欲を示していた.
(編集部/加藤里英)
好成績を収めた帝京大学,三重大学,長崎大学