編集部レポート

日本救急医学会 「第5回 臨床研修医・医学生のための救急セミナー」

開催日:2016年7月16日 会場:東京医科歯科大学

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日本救急医学会が「臨床研修医・医学生のための救急セミナー」を開催した(企画:学生・研修医部会設置運用特別委員会).今年は医学部1年生から3年目研修医まで,約35人が参加.総合司会は増井伸高先生(札幌東徳洲会病院)が務めた.「“学ぶ”ことは自分の世界が広がること.1日楽しく学んで自分の世界を広げてほしい」—代表理事 行岡哲男先生(東京医科大学)のビデオメッセージによる開会挨拶の後,症例クイズ大会「救急医 ドクターE!!」がはじまった.

クイズを通じて救急医学の面白さに触れる

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「救急医 ドクターE!!」(emergencyのE)は,学年ごとにわかれた8つのチーム対抗戦.当日は,ERと集中治療の2つのテーマで出題された.

渡邉紀博先生(名古屋掖済会病院)によるプレゼンは,複数の症例を同時に診るというERの臨場感あふれる設定で,「救急医学を好きになってもらいたい」という熱い気持ちが伝わる構成となっていた.また,検査所見の解釈や医学用語などを噛み砕いて説明したり,ジェスチャーを交えて解説するなど,低学年の学生に対する配慮も多く見受けられた.

松本徳彦先生(福岡大学病院)は集中治療の症例を担当し,敗血症の定義や診断と治療について,幅広く出題.人工呼吸器の設定に関する問題は,学生にとって少し難しいようだったが,専門用語の説明も交ぜながら1つ1つ丁寧に解説されていた.

セッション終了後,司会の上杉泰隆先生(東京都立小児総合医療センター)は「救急医は自分の好きな領域に軸足を置きながら活動している.ドクターEを通じて,一刻を争うERからじっくり診る集中治療まで,救急医の多様性を知っていただければ」と締めくくった.

キャリアパスの悩みや不安を一挙解決!

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続いて行われたのが,ワークショップ「救急医のキャリアパス」.4人の救急医が自らのキャリアを紹介した後,それを参考に自分のキャリアを考え,さらにその悩みを現役救急医に相談できる貴重な機会だ.

まず,山村仁先生(弘前大学大学院)が,自らのキャリアとともに新専門医制度について説明した.新専門医制度の基本的な部分から,気になる「救急科専門医に求められるもの」や「ダブルボードの可否」などについても,図を用いて丁寧な解説がなされた.

森川美樹先生(順天堂大学医学部附属浦安病院)のテーマは女性救急医のキャリアプラン.「救急医として 妻として 母として」と題し,結婚,出産,子育てのタイミングや仕事との両立を,自らの経験をもとに語った.「何年目で結婚するか,何年目で出産するかで,女性の働き方は人それぞれ.上司や周囲に相談しやすい環境をつくれば,女性でも無理なく働くことができる」と話し,最後に「大切なのは周りの理解」,とまとめた.今回,参加者の約3割が女性であり,ニーズの高いテーマのようだった.

増井伸高先生は「最高のキャリアパスの見つけ方」と題し,行きたい研修病院を見つけるポイントについて,藤川正先生(ふじかわクリニック)は,救急医を経て開業医への道を進んだ経験をもとに,開業のメリット・デメリットなどを紹介した.

その後行われたディスカッションでは,さまざまな悩みを現役救急医に相談する機会が設けられた.なかでも,新専門医制度や女性のキャリアプランに関する不安や悩みが多く聞かれた.「キャリアを救急からスタートすべきか,それとも外科など他に興味のある科からスタートすべきか迷っている」という相談に,萩原佑亮先生(東京都立小児総合医療センター)は「どちらを先にとるかは大きな問題ではない.ただ10年後にどうなっていたいかをイメージしておくとよい.ちなみに,救急科専門医は,途中で別の科に変更した後に戻ってきても,以前の年月も研修期間としてカウントされる.最初に救急を選択するのはオススメ」と答えていた.

クイズ大会からキャリア相談まで,大いに盛り上がったセミナーは,坂本照夫先生の「全身を診ることができるのが救急の魅力.若いうちにまず,救急を経験するのがオススメです」との言葉で締めくくられた.参加者にとっては,クイズで知識を得るのはもちろん,現役救急医の“生きた”声を聞くことができる,これまでにない機会になっただろう.

(編集部/加藤里英)