このコーナーでは,本誌コーナー「ただいま後期研修中!」の一部をお読みいただけます.内容は掲載時のものです.
もともと感染症の専門教育を受けたくてこの病院を受けましたがあっさり落とされてしまい,地元の救命救急センターで外傷の勉強をしようと思いました.そうしたら当院の医師から連絡があり,「腫瘍内科,やってみない? アメリカで教育を受けた新進気鋭の大山 優医師に付いて,マンツーマンで教育が受けられるよ」と.大山医師は癌だけでなく凝固,血液疾患全般,骨髄移植に精通し,しかも教育大好きであるとのことでした.こんなおいしい機会はないし,そもそも抗癌剤なんて興味もなかったから,逆に自分の裾野を広げるにはいい機会と思い,山から海へやって参りました.
↑腫瘍内科メンバーとその家族.前列左から2番目が筆者.3番目が大山部長.腫瘍内科レジデントプログラム1年を修了して.
腫瘍内科は「癌を抱えている方のすべてをみる総合内科」です.癌の診断・治療はもちろん,それに付随する諸問題にも精通していなければなりません.当院の特徴の1つとして患者様が高齢で複合的な合併症をもっている方が多いこともありますから,一般内科的マネージメント能力も問われます.当科ではneo-adjuvant,adjuvant,根治的・緩和的抗癌剤治療,根治的・緩和的放射線治療,化学+放射線治療,疼痛管理など癌に対するほとんどのことを行っています.そして医学的側面と同時に患者様の社会的側面・精神的側面をフォローする必要性も学ばなければなりません.
外来は週3回.フォローと外来化学療法,外来放射線療法,あるいは緩和医療を行っている方をみています.初診,セカンドオピニオンもかなりの数をみています.
外来,入院あわせ総患者数(12カ月)168例.内訳は頭頸部癌15例,大腸・直腸癌37例,胃・食道癌47例,膵原発腫瘍13例,肺癌19例,血液腫瘍5例,軟部組織腫瘍4例,中枢神経腫瘍5例,乳癌10例,原発不明癌9例,皮膚癌2例,甲状腺癌1例,尿路癌1例です.
すべての分野の癌に対して,治療から緩和医療まで,これだけの幅広さと数をみられる場所はないと思います.
私自身癌にも抗癌剤治療にも興味が元々ありませんでした.しかしよく考えたら,人間の2/3は癌にかかるのです.どのように癌を診断し,治療し,亡くなっていくのかを知ることは今後どこで医師をやるにしてもとても有意義なことと思います.これから腫瘍内科は伸びる分野,必要とされる分野であることは間違いありません.ここはきわめて働きやすい環境と,きわめて優秀な指導医,スタッフ,他診療科医師と働ける,すばらしい環境であると確信しています.
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