Smart Lab Life

〜あなたの研究生活をちょっとハッピーに〜

Script1「初めての実験―わからないことを素直に伝える」

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

ウラノ先生こんにちは,クリスティーン.調子はどうですか? 私たちの一番新しいチームメンバーとして,早速始める心構えはできましたか?

クリスティーンおはようございます,ウラノ先生.元気です,ありがとうございます.準備はできています,やりますよ!

ウラノ先生よろしい.今日は,細胞培養の基本的な技術を学びましょう.私が座っている前にある,このクリーンベンチで実験を行います.ここが今日の舞台です.

クリスティーンは,熱心に聞き,見ている.

ウラノ先生まずは,ライトをつけて,クリーンベンチの表面と自分の手を,70%のエタノールで消毒しましょう.

クリスティーンなぜ,クリーンベンチと手を70%エタノールで消毒する必要があのでしょうか?

ウラノ先生注意しておくに越したことはない,ということです.クリーンベンチに入れる実験道具,ベンチの表面,私たちの手は,バクテリアなどの混入を防ぐために,すべて滅菌する必要があるのです.

細胞は,インキュベーター内で育てます.

ウラノ先生がインキュベーターを開け,293T細胞の入った10 cmの培養皿を取り出した.
そして,培養皿を部屋の別の場所にある顕微鏡のところに持って行き,レンズの下に培養皿を置いた.ウラノ先生はピントをあわせて細胞を見ている.

ウラノ先生さて,クリスティーン,これが293T細胞です.細胞を顕微鏡で見て,どのように見えるか説明してくれますか?

クリスティーンは顕微鏡をのぞきこんでいるが,困惑している様子.

ウラノ先生クリスティーン,大丈夫ですよ.マイペースでやってください.

クリスティーンええと,培養皿の底に付着している細胞が見えます.でも,何を見ているのか,はっきりわかりません.ちょっと困っています.

ウラノ先生そうだね,どの位の細胞があるかは,細胞の混み具合で表現するのが慣習なんだ.培養皿を全体として見てご覧.どのくらいの割合で,細胞が培養皿をカバーしていると思いますか?

クリスティーン培養皿の50%くらいが,接着した細胞によってカバーされているように見えます.

ウラノ先生その通り!ではこれからこの培養皿にある細胞を,2枚に分けましょう.1:2のスプリットと呼ばれる方法です.最初に,細胞を培養している培地を吸い取ります.そして,細胞を1度PBSで洗います.PBSを吸い取り,1mLのトリプシンを加えましょう.トリプシンは,37度のウォータバスで湯せんしてあります.

クリスティーン知らなくて申し訳ありませんが,トリプシンとは何ですか?

ウラノ先生トリプシンは,一種のプロテアーゼで,細胞を培養皿に付着させているタンパク質を分解するのです.培地に含まれるトリプシン阻害剤を除くために,私たちは最初に細胞を洗ったんですよ.

では細胞をトリプシン処理している間,細胞をまくための培養皿を用意しましょう.培養皿に,細胞の名前と種類,私たちのイニシャル,そして今日の日付を書いておきましょう.それぞれの培養皿には,10 mLの培地が入ります.ですので,5mLの培地が入っている培養皿に,5mLの細胞が入っている培地を加えるようにしましょう.つまり,2つのラベルした培養皿に5mLずつの培地を入れるわけです.

クリスティーンわかりました.この細胞を培養するのには,どのような培地を使用するのでしょうか?

ウラノ先生この細胞に使用する培地は,DMEMと呼ばれる培養液に10%の牛胎仔血清,1%のペニシリンとストレプトマイシン,これはペンストレップとも呼びますが,それらを含んだものです.ペンストレップは,バクテリアが増殖するのを防ぐための抗生物質です.培養液は,すでに37℃に湯せんしてあります.10分間,細胞がはがれてくるのを待って,ここでまた会いましょう.

10分が経過し,クリスティーンは細胞培養室に戻ってきた.

ウラノ先生それでは,はがれてきた細胞を9.5 mLの培地で懸濁し,5mLずつをそれぞれの培養皿にピペットで加えましょう.そうすると,それぞれの培養皿には10 mLの培養液が入っていることになります.君も1枚の培養皿にある細胞を2枚の培養皿に分けてくれるかな.その前にはいつでも,細胞を光学顕微鏡で見て確認するようにしよう.これは難しいコンセプトです.わかりやすく説明できていればよいのですが.なにか質問はあるかな?

クリスティーンいつも細胞は,1枚から2枚へと分割して増やしていくのでしょうか?

ウラノ先生いい質問だね.細胞は,混み具合によって分割して増やしていくんだ.混んでいれば混んでいるほど,分割度を上げていく必要がありますね.つまり,例えば,もし細胞が100%の混み具合だとすれば,私たちは1枚から4枚へと細胞を分割するでしょう.それから,細胞の種類とその増殖の早さにもよりますね.素早く増殖する細胞の場合,増殖が遅い細胞に比べて,たとえ混み具合が同じでも,分割度を上げる必要がありますね.

クリスティーンありがとうございます.

クリスティーンは,自分で細胞をまく準備ができている.

【3】発音のKEY POINTS「L」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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