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Script10「白熱の学会発表―自分のアイデアを表現する」

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

クリスティーンはERストレスに関する学術集会に参加する.彼女はER apoptic protein(ERAP)に関する研究についてポスター発表をする準備をしている.彼女のプレゼンテーションを見るために,数人の研究者が学術集会から集まってくる.

ERストレスは,小胞体に蓄積した折り畳み不全タンパク質が原因で生じる細胞ストレスの一種である.クリスティーンはERAPがβ細胞においてERストレス誘導性のアポトーシスを誘導することを発見した.

クリスティーンお早うございます,よろしくお願いします.私のポスターセッションにお集りいただいてありがとうございます.私のプレゼンテーションは,ERAPはERストレス誘導性のβ細胞死の鍵となるメディエータである,という話題についてです.研究の過程で,私はβ細胞株において薬理学的な,また生理的なERストレス誘発因子によってERAPが誘導されうることを見出しました.さらにヒトの初代培養膵島においてもERAPがERストレスによって誘導されうることを,qRT-PCRとイムノブロットを用いて発見しました.

研究者1どのようなERストレス条件を用いましたか?

クリスティーンここに示しますように,一般的な科学的ERストレス誘発物質である,thapsigarginとtunicamycinを用いました.また,生理的なERストレス誘発因子である,慢性高グルコース,高パルミテート処理も用いました.これまでに,これらの刺激はERストレスを惹起しUPRを活性化することが示されています.

研究者2ERAP誘導にはどのようなERストレス感受性因子が関与しているのですか?

クリスティーンよくぞ聞いてくれました.その実験に続いて,私はUPRのマスター制御因子であるIRE1,PERK,ATF6それぞれをノックダウンしたところ,驚いたことに,ERAPはPERKによって制御されていることを見出しました.また,PERK経路の下流にあるリン酸化eIF2αもERAP誘導に関与することを発見しました.さらに,ERAPプロモーターリポーターを用いたルシフェラーゼアッセイを行ったところ,ERAP誘導は転写レベルで引き起こされることが解ったのです.

研究者1どのUPR転写因子が関与するのですか?

クリスティーンいくつかのUPR転写因子を解析した結果,ATF4がERストレス下のERAP転写に関与していることを見出しました.ここに示しますように,β細胞株とATF-/-のマウス胚性線維芽細胞においてsiRNAを用いてATF4をノックダウンしたところ,ERAP発現の減弱を計測することができました.さらには,ERPプロモーターのレポーターをATF4発現ベクターとコ・トランスフェクションしたところ,ルシフェラーゼ活性の増強が見られました.ERストレス下でATF4がERAPのプロモーターにリクルートされることは,ChIPアッセイでも確認することができました.

研究者2ERストレス下でのERAPの機能は何なんでしょうか?

クリスティーン素晴らしい質問です.β細胞株でERAPをノックダウンしたところ,ERストレス下でのcaspase-3切断とAnnexin Ⅴ染色の減少で示されるように,細胞死の減弱を見出しています.またERAPを過剰発現させたところ,細胞死を計測できました. ERAP過剰発現時にASK1リン酸化量の増加を計測可能だったことから,1つの考えられるメカニズムとしてASK1の活性化を介したものがあります.ASK1は既知のUPRアポトーシス経路です.

研究者2このプロジェクトで次のステップは何ですか?

クリスティーン将来的には,ERAP-/-マウスをERストレス性の糖尿病モデルマウスであるAkitaマウスと交配することを検討しています.Akitaマウスは,ER膜でうまく折り畳まれないインスリンの変異型を発現し,重篤なERストレスを引き起こします.この交配動物を作製したら,糖尿病の諸症状であるERストレスマーカー,膵島サイズ,β細胞死を計測したいと考えています.この交配マウスでは糖尿病が発症しないのではないかと仮説を立てています.

研究者1思いつくままに言いますが,ERAPが他の細胞種に影響を与える可能性はあると思いますか?

クリスティーンニューロンのようないくつかの細胞種でERストレスが呈される可能性がありますから,ERAPが誘導されうるでしょう.将来的には,解明を進めたいと思います.

研究者2ERAPは糖尿病治療薬のよい標的であると思われますか?

クリスティーン全てを考え合わせると,そう思います.糖尿病の進行を予防,または遅延される新しい方法を同定するために,私たちは既承認薬を用いた薬剤スクリーニングの実施も計画しています.同定した薬剤を用いて,ERAPの標的化が明らかな糖尿病を本当に予防しうるか否かはっきりさせるために,全糖尿病マウスを用いたin vivo 研究を行うつもりです.

【3】発音のKEY POINTS「複合名詞」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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