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Script5「染まるや,染まらざるや―説明をうながす」

ウラノ先生は,免疫組織化学を行い蛍光顕微鏡を使ってサンプルを観察する方法を,クリスティーンに指導するつもりである.その前日,ウラノ先生はマウスのβ細胞株であるMIN6に発現しているインスリンを検出するため,一次抗体でのインキュベーションを行った.次の日,染色工程を終了させて,蛍光顕微鏡下で結果を見るため,クリスティーンは研究室にいるウラノ先生とおちあう.

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

ウラノ先生調子はどうですかクリスティーン! 今までのところをまとめると,Eメールで書いた通り,免疫組織化学のプロトコールの最初のステップは私が行っておきました.インスリンに対する一次抗体と一緒に,MIN6細胞を低温室で一晩インキュベートしてあります.

クリスティーン昨日やっていただいたステップを簡単に説明していただけますか?

ウラノ先生もちろんですよ.まず,細胞をPBSに希釈した4%パラホルムアルデヒドで30分,室温で固定しました.次に,4%のパラホルムアルデヒドと0.1%のTweenを含むPBSで2分間,室温で細胞の透過処理を行いました.そして細胞を洗浄し,エンハンサー溶液を数滴加えて室温で30分インキュベートしてバックグランドを弱めました.最後に,スライドに希釈したインスリンに対する一次抗体を数滴加え,プレートを4℃で一晩インキュベートしました.今のところついてきてますか?

クリスティーンわかりました,ありがとうございます.では,今日やるべきことのリストは何でしょうか?

ウラノ先生まず最初にするべきこととして,0.1%のTweenを含んだPBSでスライドを4回,30分かけて洗浄します.スライドをもってきて一緒にやってみましょう.

クリスティーンはウラノ先生の後をついて低温室へ入った.ウラノ先生はスライドの入った湿度維持チャンバーをもってきた.2人は実験室へ戻ってくる.

ウラノ先生ご覧のように,洗浄溶液を入れたコプリンジャーを用意しておきました.ただスライドを鉗子でつかんで,ジャーに漬けるだけです.10分ほどインキュベートし,これをくり返してください.何も難しいことはありませんよ.

ウラノ先生がラボの他の学生の手助けをしている間に,クリスティーンは洗浄を自分1人でやってみる.クリスティーンはウラノ先生に完了の合図を送り,ウラノ先生はまたクリスティーンと一緒になって実験を進めていく.

ウラノ先生とてもうまく進んでいますよ! では希釈した二次抗体を加え,室温で1時間インキュベートしましょう.その後で今やったようにスライドを洗浄してください.インキュベーションと洗浄のステップが終わったらまた集合しましょう.

クリスティーンちょっと待ってください,どの二次抗体を使うのでしょう?

ウラノ先生今朝はどうかしているな….思い出させてくれてありがとう.モルモットに対するCy3標識抗体を1:200希釈で使ってくださいね.インスリンに対する一次抗体がモルモットのものだからです.

クリスティーンは二次抗体のインキュベーションと洗浄のステップを終えた.ウラノ先生はラボに戻って最後のステップの仕上げを手伝い,蛍光顕微鏡下でスライドを観察する.

ウラノ先生それでは,マウンティングバッファーを数的たらしてスライドにカバースリップを載せましょう.最後に,透明なマニキュアで縁を封入しましょう.

スライドを蛍光顕微鏡で観察するため,ウラノ先生は手順をやってみせ,クリスティーンはウラノ先生の真似をする.

ウラノ先生さあ,準備完了ですね,スライドは観察可能な状態になりました.顕微鏡の上にスライドを置いてください.低倍率で細胞に焦点を合わせましょう.焦点が合ったら,ライトを消して,二次抗体に結合した蛍光分子を励起するのに適切なフィルターを選んで,放射光を見ましょう.私たちが使った二次抗体では,赤色が見えるはずです.覗いてみてくださいクリスティーン,そして何が見えているか説明してみてくださいね.

クリスティーンなるほど! MIN6細胞の高いインスリン含量を示す赤いシグナルが見えます.

ウラノ先生それはすばらしい.これで免疫組織化学のやり方と,結果を観察する蛍光顕微鏡の使い方がわかりましたね.

クリスティーンはい,よくわかりました!

【3】発音のKEY POINTS「PとB」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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