本コンテンツについて
留学,学会発表,外国人研究者との共同研究…様々なシーンで重要性の高まる英語.月刊「実験医学」誌連載“誌上留学―ラボ英会話のKEY POINTS”では,日本人研究者が知っておきたい伝わるトークの秘訣を,ケーススタディー形式でご紹介しています.
本サイトでは,連載誌面に掲載された英語の「発音」をネイティブの音声・動画で視聴いただけます.「この単語って,こういう発音だったの?!」など,きっと発見があるはず.また,Script全文の対訳もご覧いただけますので,辞書も必要ありません.
Script5「染まるや,染まらざるや―説明をうながす」
ウラノ先生は,免疫組織化学を行い蛍光顕微鏡を使ってサンプルを観察する方法を,クリスティーンに指導するつもりである.その前日,ウラノ先生はマウスのβ細胞株であるMIN6に発現しているインスリンを検出するため,一次抗体でのインキュベーションを行った.次の日,染色工程を終了させて,蛍光顕微鏡下で結果を見るため,クリスティーンは研究室にいるウラノ先生とおちあう.
【1】全文のネイティブ音声
【2】全文の対訳
ウラノ先生調子はどうですかクリスティーン! 今までのところをまとめると,Eメールで書いた通り,免疫組織化学のプロトコールの最初のステップは私が行っておきました.インスリンに対する一次抗体と一緒に,MIN6細胞を低温室で一晩インキュベートしてあります.
クリスティーン昨日やっていただいたステップを簡単に説明していただけますか?
ウラノ先生もちろんですよ.まず,細胞をPBSに希釈した4%パラホルムアルデヒドで30分,室温で固定しました.次に,4%のパラホルムアルデヒドと0.1%のTweenを含むPBSで2分間,室温で細胞の透過処理を行いました.そして細胞を洗浄し,エンハンサー溶液を数滴加えて室温で30分インキュベートしてバックグランドを弱めました.最後に,スライドに希釈したインスリンに対する一次抗体を数滴加え,プレートを4℃で一晩インキュベートしました.今のところついてきてますか?
クリスティーンわかりました,ありがとうございます.では,今日やるべきことのリストは何でしょうか?
ウラノ先生まず最初にするべきこととして,0.1%のTweenを含んだPBSでスライドを4回,30分かけて洗浄します.スライドをもってきて一緒にやってみましょう.
クリスティーンはウラノ先生の後をついて低温室へ入った.ウラノ先生はスライドの入った湿度維持チャンバーをもってきた.2人は実験室へ戻ってくる.
ウラノ先生ご覧のように,洗浄溶液を入れたコプリンジャーを用意しておきました.ただスライドを鉗子でつかんで,ジャーに漬けるだけです.10分ほどインキュベートし,これをくり返してください.何も難しいことはありませんよ.
ウラノ先生がラボの他の学生の手助けをしている間に,クリスティーンは洗浄を自分1人でやってみる.クリスティーンはウラノ先生に完了の合図を送り,ウラノ先生はまたクリスティーンと一緒になって実験を進めていく.
ウラノ先生とてもうまく進んでいますよ! では希釈した二次抗体を加え,室温で1時間インキュベートしましょう.その後で今やったようにスライドを洗浄してください.インキュベーションと洗浄のステップが終わったらまた集合しましょう.
クリスティーンちょっと待ってください,どの二次抗体を使うのでしょう?
ウラノ先生今朝はどうかしているな….思い出させてくれてありがとう.モルモットに対するCy3標識抗体を1:200希釈で使ってくださいね.インスリンに対する一次抗体がモルモットのものだからです.
クリスティーンは二次抗体のインキュベーションと洗浄のステップを終えた.ウラノ先生はラボに戻って最後のステップの仕上げを手伝い,蛍光顕微鏡下でスライドを観察する.
ウラノ先生それでは,マウンティングバッファーを数的たらしてスライドにカバースリップを載せましょう.最後に,透明なマニキュアで縁を封入しましょう.
スライドを蛍光顕微鏡で観察するため,ウラノ先生は手順をやってみせ,クリスティーンはウラノ先生の真似をする.
ウラノ先生さあ,準備完了ですね,スライドは観察可能な状態になりました.顕微鏡の上にスライドを置いてください.低倍率で細胞に焦点を合わせましょう.焦点が合ったら,ライトを消して,二次抗体に結合した蛍光分子を励起するのに適切なフィルターを選んで,放射光を見ましょう.私たちが使った二次抗体では,赤色が見えるはずです.覗いてみてくださいクリスティーン,そして何が見えているか説明してみてくださいね.
クリスティーンなるほど! MIN6細胞の高いインスリン含量を示す赤いシグナルが見えます.
ウラノ先生それはすばらしい.これで免疫組織化学のやり方と,結果を観察する蛍光顕微鏡の使い方がわかりましたね.
クリスティーンはい,よくわかりました!