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Script2「遺伝子導入への挑戦―議論を深める」

クリスティーンは,はじめは落ち着かない様子でいたものの,だんだんと安心して細胞株を用いた実験を行えるようになってきた.今日は,ウラノ先生が細胞株に発現プラスミドを導入する様子を見学する.

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

クリスティーンは培養室でウラノ先生と待ち合わせです.

クリスティーンこんにちは,ウラノ先生.お元気ですか?

ウラノ先生おはよう,クリスティーン.元気ですよ.今日はLipofectamine 2000を使って293T細胞にGFP発現プラスミドを導入する方法を教えましょう.昨日,遺伝子導入用に293T細胞を2つのプレートに蒔いておきました.細胞が入っている培地は,遺伝子導入効率を悪くするような抗生物質を含まないものです.

クリスティーン細胞をどれくらい蒔かれたのですか?

ウラノ先生293T細胞を6cmプレートへ翌日に50~75%の混み具合になるように蒔いておきました.

ウラノ先生はいすを持ってきてクリーンベンチのところに座る.

ウラノ先生まずはじめに,遺伝子導入用の溶液を準備しなければなりません.このプロトコールでは,250μLのOptimem IにLipofectamine 2000を10μL加えたチューブが1つ,250μLのOptimem IにGFPプラスミドを4μg加えたチューブが1つ必要です.細胞培養用の冷蔵庫に保存してある共用のOptimem Iを,予め温めておきました.

ウラノ先生は溶液の準備をはじめ,クリスティーンは熱心に見て憶えている.

ウラノ先生よし,今から5分待ちます.ここまでのところはわかりましたか?

クリスティーン先生が仰ることを完璧にわかっているとは言えなそうです.

ウラノ先生質問があったらいつでも遠慮なく聞いてくださいね.君の言うことはちゃんと聞いています.それと,ワープロで書かれたプロトコールをeメールで送っておきましょう.

5分が経過.

ウラノ先生さて,それではこれらの溶液を混ぜて,クリーンベンチの中で室温で20分インキュベートしましょう.その間に私はふだん,前日に蒔いておいた細胞から培地を抜いて,代わりに新しい培地2 mLを加えるようにしているんですよ.20分後にまたここで会いましょう.残りの手順を教えます.

20分が経った.クリスティーンが培養室へ戻ってくる.

ウラノ先生さて,いよいよ混ぜた溶液を細胞のプレートに500μL加えます.細胞は24~48時間インキュベートします.今回の場合,24時間で十分です.明日の朝には,蛍光顕微鏡下で細胞を観察してGFPを見ることができます.この観察で,遺伝子導入の効率がわかるでしょう.それでは,君1人でプレートへの遺伝子導入に挑戦してみてください.細胞をチェックするために明朝ここで会いましょう.質問はありますか?

クリスティーンLipofectamine 2000がどう機能するかはわかったのですが,そのコンセプトがわかりません.もう一度説明していただけますか?

ウラノ先生わかりました.Lipofectamine 2000は正に帯電したリポソームをつくって,負に帯電したプラスミドやsiRNAに結合するのです.この正に帯電したリポソームは,負に帯電した細胞膜に結合し,融合することが可能で,遺伝物質を細胞の中に,そして核内へ送り込むことができるのです.

クリスティーンありがとうございました.それでは先生さようなら! また明日.

【3】発音のKEY POINTS「L」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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