本コンテンツについて
留学,学会発表,外国人研究者との共同研究…様々なシーンで重要性の高まる英語.月刊「実験医学」誌連載“誌上留学―ラボ英会話のKEY POINTS”では,日本人研究者が知っておきたい伝わるトークの秘訣を,ケーススタディー形式でご紹介しています.
本サイトでは,連載誌面に掲載された英語の「発音」をネイティブの音声・動画で視聴いただけます.「この単語って,こういう発音だったの?!」など,きっと発見があるはず.また,Script全文の対訳もご覧いただけますので,辞書も必要ありません.
Script6「緊張のラボミーティング―議論に加わり,膨らませる」
【1】全文のネイティブ音声
【2】全文の対訳
クリスティーンは今日のラボミーティングで進捗を発表する予定になっている.彼女はラボメンバーに,ERAP(endoplasmic reticulum apoptotic protein)に関する研究の進展を説明するつもりである.
クリスティーンはERAPがどのようにUPR(unfolded protein response)によって制御されているか議論するつもりである.ラボメンバーが会議室に集まり,クリスティーンはPowerPointでプレゼンを始める準備ができている.
クリスティーン皆さんこんにちは.これからERAPに関する私の研究の進捗を詳しくお話したいと思います.気軽に質問を挟んでくださいね.
私はERAPがどのようにUPRによって制御されているか解析してきました.ご存知のとおり,UPRは3つのマスターレギュレーターによって制御されています.IRE1,PERK,そしてATF6です.私はβ細胞株INS-1 832/13におけるPERKのsiRNAによるノックダウン条件下では,ERストレス状態でのERAPの発現レベルが減弱していることを結論づけました.
ソーニャちょっと聞きたいんだけど,IRE1やATF6をノックダウンしてERAPの発現を測ったことはある?
クリスティーンとてもよい質問です.その実験は行っていまして,scramble siRNAを用いた対照サンプルとERAPの発現レベルに明確な違いは見られませんでした.
ウラノ先生今後を考えると,PERKによるERAP制御を確認するためには,他にどのような計画がありますか?
クリスティーンPERKノックアウトマウスの胚性線維芽細胞におけるERAPの発現レベルを測定しようと考えています.IRE1ノックアウトやATF6ノックアウトマウスの胚性線維芽細胞も同様です.またPERKを過剰発現させた際のERAPの発現も測ってみようと思っています.
先に進みますが,私はERAP発現においてeIF2αリン酸化に意味があるかどうかを知りたいと考えています.ERストレスによる活性化に伴い,PERKがeIF2αをリン酸化することからピンとくるはずです.リン酸化されたeIF2αは転写因子ATF4のような特定のmRNAの転写を促進する一方で,後半なタンパク質の翻訳を阻害します.私はINS-1 832/13細胞をeIF2αのリン酸化を誘導する化合物であるsalubrinalで処理しました.その結果,ERAP発現レベルの上昇が認められました.ここまでよろしいですか?
キャスリン別のことを急に思いついたのですが,コントロールとなる遺伝子は測定していますか?
クリスティーンはい.ATF4とCHOPの発現レベルを測りましたところ,salubrinal処理したINS-1 832/13細胞では両者とも上昇していました.salubrinalによるeIF2リン酸化レベルの上昇は,イムノブロットでも確認しています.
ウラノ先生PERKがERAP発現における転写因子を制御する可能性について,解析を始めたのではないかなと思っているのですが!
クリスティーンそうです.INS-1 832/13細胞でATF4とCHOPの両方をsiRNAでノックダウンしました.ATF4のsiRNAでは,ERストレス状況下でのERAP発現レベルの低下が見られました.ですがCHOPをノックダウンした時には何の違いも見られませんでした.ATF4-/-のマウス胚性線維芽細胞を使ったり,ATF4を過剰発現したりすることでこれらの結果を確認することは,やるべき事のリストに入っています.
ブライアンもう1つ質問があります.ATF4過剰発現によるERAPプロモーターの活性化を測定するため,ルシフェラーゼアッセイを行うのはどうでしょうか.次に,さらにATF4がERAPの転写因子であるかを確認するため,ERストレス条件下でのERAPプロモーターへのATF4のリクルートを,ChIP解析で測定すればいいんじゃないですか.
クリスティーンみなさん,アドバイスをありがとうございます.以前お話したように,私はERAP介在性のβ細胞死のメカニズムを研究し始めました.次の進捗報告では,それに関するデータを共有したいと思います.それでは皆さんさようなら,ご清聴ありがとうございました.