本コンテンツについて
留学,学会発表,外国人研究者との共同研究…様々なシーンで重要性の高まる英語.月刊「実験医学」誌連載“誌上留学―ラボ英会話のKEY POINTS”では,日本人研究者が知っておきたい伝わるトークの秘訣を,ケーススタディー形式でご紹介しています.
本サイトでは,連載誌面に掲載された英語の「発音」をネイティブの音声・動画で視聴いただけます.「この単語って,こういう発音だったの?!」など,きっと発見があるはず.また,Script全文の対訳もご覧いただけますので,辞書も必要ありません.
Script3「次なるステップ―指示をきちんとキャッチする」
クリスティーンは細胞への遺伝子導入を覚えたので,次のステップに進み,転写制御を研究するためのルシフェラーゼアッセイの方法を学びます.彼女はすでに,ATF6発現プラスミドと,BiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターを,293T細胞へ導入しました.また,空の発現ベクターとBiPプロモーターも,コントロールとして細胞に導入してあります.遺伝子導入から24時間が経ち,クリスティーンは細胞溶解液を単離する準備ができました.彼女はプレートをもって研究室に現れ,ウラノ先生とコミュニケーションをとります.
【1】全文のネイティブ音声
【2】全文の対訳
ウラノ先生やあクリスティーン,元気ですか? 細胞溶解液を調製する準備ができましたね.始めたくてうずうずしているのですか? よし,ではまず培地を吸引して除き,細胞をPBSで洗浄しましょう.
ウラノ先生はクリスティーンが細胞を洗浄するのを待っている.
ウラノ先生いいですね.では私が準備しておいた低温の溶解バッファーで,細胞を溶かしましょう.2つのプレートに,大体400μLを加えてください.プレートをゆらして,細胞をはがしてください.細胞を1.5 mLの微量遠心チューブに移して,チューブを氷上に置きましょう.
クリスティーンはそれぞれのサンプルについて細胞を溶かし,細胞を微量遠心チューブに移す.
ウラノ先生さて,それではサンプルを10秒ほどボルテックスし,4℃ 12,000 gで2分間チューブを遠心しなければなりません.上清を除いて,新しいチューブに移しましょうね.
クリスティーンは細胞溶解液の調製を終わらせる.
ウラノ先生よくできましたね.では続きをする前に,この実験のコンセプト全体をざっと説明したいと思います.
クリスティーンはい,この実験がどういう意味をもつのか,分かりやすく説明をお願いします.
ウラノ先生1つのプレートの細胞に,ATF6の過剰発現プラスミドとBiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターのコンストラクトを一緒に導入しましたね.それともう1つのプレートには,空の発現プラスミドとBiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターのコンストラクトも導入しましたね.
クリスティーンそうです.どういう結果が予想されるのでしょうか?
ウラノ先生ATF6はBiPプロモーターに結合し活性化することが知られています.ですから,ATF6がBiPプロモーターを活性化することで,ルシフェラーゼ遺伝子が発現すると予想されます.ルシフェラーゼ試薬を加えれば,ルシフェラーゼ酵素が試薬を蛍光に変換するでしょう.ルミノメーターを使って,その蛍光を測ることができます.この測定がATF6によるBiPプロモーター活性化を反映するのです.もう一方のサンプルでは,ATF6がないことから,BiPプロモーターはONにならず,蛍光は生じないはずです.
クリスティーンとてもよくわかりました.では,サンプルの蛍光はどのように測るのでしょうか?
ウラノ先生よし,まずはサンプルを加えた96ウェルプレートを3つ準備しましょう.1つのウェルには,バックグラウンドのコントロールとして溶解バッファーだけを加えておいてください.次に,ルシフェラーゼ試薬をサンプルを含むウェルに加えましょう.バックグランドコントロールを含むウェルにも同様です.
クリスティーンは96ウェルプレートを用意している.
ウラノ先生よし,それではルミノメーターで蛍光を測ってみましょう.プレートを機械の中に置いて,付属のPCで“Luminescence program”を起動してください.“read plate”をクリックしてください.このプログラムは数秒で各ウェルについての数値を出してくれるでしょう.それらの数値がサンプルの蛍光強度を反映しているんですよ.
クリスティーンとウラノ先生はプレートの蛍光を測定している.
ウラノ先生見てわかるように,数値はATF6によってBiPプロモーターが活性化されたことを示していますね.予想どおり,ATF6が過剰発現していないサンプルでは,バックグランドの蛍光値しかありません.よって,本実験はそのように結論できるのです.質問があれば何でも遠慮なくメールしてくださいね.
クリスティーンこのアッセイのやり方を教えていただいてありがとうございました.