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Script3「次なるステップ―指示をきちんとキャッチする」

クリスティーンは細胞への遺伝子導入を覚えたので,次のステップに進み,転写制御を研究するためのルシフェラーゼアッセイの方法を学びます.彼女はすでに,ATF6発現プラスミドと,BiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターを,293T細胞へ導入しました.また,空の発現ベクターとBiPプロモーターも,コントロールとして細胞に導入してあります.遺伝子導入から24時間が経ち,クリスティーンは細胞溶解液を単離する準備ができました.彼女はプレートをもって研究室に現れ,ウラノ先生とコミュニケーションをとります.

【1】全文のネイティブ音声

 

【2】全文の対訳

ウラノ先生やあクリスティーン,元気ですか? 細胞溶解液を調製する準備ができましたね.始めたくてうずうずしているのですか? よし,ではまず培地を吸引して除き,細胞をPBSで洗浄しましょう.

ウラノ先生はクリスティーンが細胞を洗浄するのを待っている.

ウラノ先生いいですね.では私が準備しておいた低温の溶解バッファーで,細胞を溶かしましょう.2つのプレートに,大体400μLを加えてください.プレートをゆらして,細胞をはがしてください.細胞を1.5 mLの微量遠心チューブに移して,チューブを氷上に置きましょう.

クリスティーンはそれぞれのサンプルについて細胞を溶かし,細胞を微量遠心チューブに移す.

ウラノ先生さて,それではサンプルを10秒ほどボルテックスし,4℃ 12,000 gで2分間チューブを遠心しなければなりません.上清を除いて,新しいチューブに移しましょうね.

クリスティーンは細胞溶解液の調製を終わらせる.

ウラノ先生よくできましたね.では続きをする前に,この実験のコンセプト全体をざっと説明したいと思います.

クリスティーンはい,この実験がどういう意味をもつのか,分かりやすく説明をお願いします.

ウラノ先生1つのプレートの細胞に,ATF6の過剰発現プラスミドとBiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターのコンストラクトを一緒に導入しましたね.それともう1つのプレートには,空の発現プラスミドとBiPプロモーターをもつルシフェラーゼレポーターのコンストラクトも導入しましたね.

クリスティーンそうです.どういう結果が予想されるのでしょうか?

ウラノ先生ATF6はBiPプロモーターに結合し活性化することが知られています.ですから,ATF6がBiPプロモーターを活性化することで,ルシフェラーゼ遺伝子が発現すると予想されます.ルシフェラーゼ試薬を加えれば,ルシフェラーゼ酵素が試薬を蛍光に変換するでしょう.ルミノメーターを使って,その蛍光を測ることができます.この測定がATF6によるBiPプロモーター活性化を反映するのです.もう一方のサンプルでは,ATF6がないことから,BiPプロモーターはONにならず,蛍光は生じないはずです.

クリスティーンとてもよくわかりました.では,サンプルの蛍光はどのように測るのでしょうか?

ウラノ先生よし,まずはサンプルを加えた96ウェルプレートを3つ準備しましょう.1つのウェルには,バックグラウンドのコントロールとして溶解バッファーだけを加えておいてください.次に,ルシフェラーゼ試薬をサンプルを含むウェルに加えましょう.バックグランドコントロールを含むウェルにも同様です.

クリスティーンは96ウェルプレートを用意している.

ウラノ先生よし,それではルミノメーターで蛍光を測ってみましょう.プレートを機械の中に置いて,付属のPCで“Luminescence program”を起動してください.“read plate”をクリックしてください.このプログラムは数秒で各ウェルについての数値を出してくれるでしょう.それらの数値がサンプルの蛍光強度を反映しているんですよ.

クリスティーンとウラノ先生はプレートの蛍光を測定している.

ウラノ先生見てわかるように,数値はATF6によってBiPプロモーターが活性化されたことを示していますね.予想どおり,ATF6が過剰発現していないサンプルでは,バックグランドの蛍光値しかありません.よって,本実験はそのように結論できるのです.質問があれば何でも遠慮なくメールしてくださいね.

クリスティーンこのアッセイのやり方を教えていただいてありがとうございました.

【3】発音のKEY POINTS「WとV」

 

誌上留学!ラボ英会話のKEY POINTS Web留学編 目次

プロフィール

浦野 文彦(Fumihiko Urano)
1994年,慶應義塾大学医学部卒業.慶應大学医学部病理学教室にて小児病理学,分子病理学を学ぶ(秦順一教授指導,元国立成育医療センター総長).’98年からNew York University School of Medicine分子病理部門研究員(David Ron教授,現University of Cambridge教授),2002年よりUniversity of Massachusetts Medical School助教授,’08年より准教授,’11年永久教授権獲得,2012年7月よりWashington University School of Medicine, Samuel E. Schechter冠教授就任.’11年,American Society for Clinical Investigation会員に推挙される.小胞体ストレスが,老化,糖尿病,神経変性疾患に与える役割を研究しています.また,小胞体ストレス病(Wolfram syndrome)の患者,家族を支えるためのクリニックを運営しています .興味のある方は次のサイトをご覧ください(to wwwhttp://www.erstress.com , to wwwhttp://fumihikourano.blogspot.com/ & to wwwhttps://wolframsyndrome.dom.wustl.edu/).
Christine Oslowski
2007年,マサチューセッツ大学を卒業し,同大学医学部医科学博士課程に入学.2012年,浦野教授の研究室で博士号を取得し,現在はボストン大学医学部でポスドクとして研究に,また教育に励んでいる.
Marjorie Whittaker
ボストン大学でSpeech-Language Pathologyの修士号を取得後,耳の聞こえない子供達の発音を矯正する仕事に従事.その後,外国人エンジニア,医師などの発音矯正の授業,コンサルティングを行う,The Whittaker Groupを設立する.2006年には,Lynda Katz Wilner先生とともに,ESL RULESを設立し,英語の発音に関するセミナーを主宰し,『RULES』,『Medically Speaking RULES』,『RULES BY THE SOUND』,『Medically Speaking Idioms』といった本の出版をしている.詳細は,to wwwhttp://www.eslrules.comto wwwhttp://www.prospeech.comまたはまで.
プロフィールは実験医学掲載当時のものになります.

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