私たち「友と共に学ぶ東西両医学研修の会(TOMOTOMO)」では15年前からプライマリ・ケア,漢方薬や鍼灸について,継続的に勉強会を行っています.また,西伊豆の過疎地で医療ボランティアをしながら,医学生や研修医とともに学べるシステムをつくってきました.東日本大震災後は,医療ボランティアの中心を東北に移しています.また沖縄離島の医療ボランティアも行っています.2012年には神奈川県横浜市に拠点となるクリニックを開設し,医学生・研修医が臨床の場で学べる場をつくりました.ゼミでは研修プログラムをつくり東洋医学を自在に使えるようになるための連続講座を開設しています.また,整形外科疾患に精通したメンバーも多く在籍しており,プライマリ・ケア実践の場では非常に必要性が高い割に医学生時代には触れる機会が乏しい整形外科疾患を実践的に学ぶことができます.
西洋医学だけでは問題が解決しない・治療法が乏しい患者さんに対して,東洋医学であれば対処できる場面が日々の臨床で多々見受けられます.例えばセンナを飲むと下痢になるけど飲まないと便秘になる患者さんや,朝方必ず水様便になってしまう高齢の患者さん,一般的治療ではコントロールが難しい湿疹の患者さん,毎月月経のたびに感冒にかかる患者さん,台風襲来の前だけひどい頭痛やめまいが起きる患者さん,これらの患者さんは一般的な西洋医学だけでは説明がつかないことがあります.しかし,実際は漢方薬が著効する可能性の高い患者さんたちであることが多いのです.私たちは,西洋医学では危ない疾患を見逃さないこと,すなわち「患者さんを不幸にしない」医療を,東洋医学ではより快適な毎日を送ること,すなわち「患者さんを幸せにする」医療をめざしています.どちらにも偏りすぎず,両者の特徴をうまく利用して医療を行うことこそ,理想的な医療に近づくと考えています.
木村朗子