総合診療医は,新専門医制度の構築とともに注目度・知名度が上がっています.しかし,現状医学生や研修医に提供される情報は不十分で,総合診療医の活躍を目にすることも少ないと聞きます.筑波大学では2014年より文部科学省の支援を受けて,「総合診療塾」というプログラムを開発しました.これは医学生・初期研修医を対象として,将来総合診療を実践するために必要な基本的能力の導入教育と,地域で活躍する総合診療医の魅力を実際に体験しながらその概要を学ぶ機会を提供するものです.
①年間を通した月1回程度の講義・演習,②長期休みを利用した地域実習,③年1回半日のセミナー「総合診療☆家庭医療全国公開セミナー in Tsukuba」の形をとっています.①は大学病院・地域で活躍する総合診療医による指導のもとで,次世代の総合診療を担うために必要な臨床推論・患者中心の医療・家族志向ケア・緩和ケア・老年医学・スポーツ医学などを学び,その知識をもとに,②で総合診療医の生の魅力にも触れる地域実習を行います.臨床スキルの向上のみならずキャリアイメージの確立もねらいとしています.総合診療,地域医療分野の教育内容には教育機関により差がある現状から,毎月の総合診療塾や公開セミナーは筑波大学以外の方にも受講可能とし,遠隔会議システムなども活用し国内外を問わず幅広く,総合診療能力をもった医学生・研修医を増やす機会を提供しています.実際に③の全国公開セミナーには毎年15 大学以上から参加者があり,後期研修医,指導医も参加しています.
総合診療医が専門医として確立しつつありますが,積極的に総合診療医をキャリアとして選ぼうとする医学生・初期研修医はまだまだ少数派です.「総合診療医になりたい!」と思う人が無理なくこの道に進めるよう全国をあげて支援を行う必要があります.自分たちにできることとして,筑波大学のノウハウをできる限り提供していきたいと思っています.
吉本 尚