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FMRPの高発現は腫瘍の免疫回避を誘導する ―欠損すると知的障害を起こす遺伝子の予想外の役割

埼玉医科大学医学部 ゲノム基礎医学 黒川理樹

経性脆弱X精神遅滞タンパク質(fragile X mental retardation protein,FMRP)の発現抑制で惹起される脆弱X症候群は,知的障害を呈する疾患である.FMRP発現が低下すると,シナプスのシグナル伝達や形態形成が異常になり神経の機能不全が起こると考えられている.今回,FMRPが腫瘍に免疫系を回避させ,腫瘍浸潤と転移を誘導することが示された(Zeng Q, et al:Science, 378:eabl7207, 2022).FMRPはほとんどのヒト固形がんで発現が亢進しているが,腫瘍増殖そのものを促進することはなかった.FMRP発現の上昇を,免疫組織化学的にヒトとマウスのがんで確認したところ,実際に膵管腺がん(PDAC),大腸がん,乳がんとメラノーマで,FMRPは正常組織に比較して高発現していた.なお,転写因子MycがFMRPの転写を活性化していた.

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DOI:10.18958/7195-00004-0000437-00

2023年3月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2023年3月号 Vol.41 No.4
COVID-19重症化・後遺症のメカニズム
免疫応答の個人差がみえてきた

熊ノ郷 淳/企画
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