哺乳類胚の発生休止(embryonic diapause)は,着床前胚が母体の環境に応じて数日から数カ月もの間,発生を休止もしくは遅延することで,着床時期を延ばす現象である.発生休止の生理的意義は,出産時期の最適化であり,出産・育児に適さない時期を,胚発生を休止させることで克服する.哺乳類胚の発生休止は,19世紀に野生のヨーロッパノロジカで発見され,今日までにハツカネズミ,ミンク,ワラビーなど少なくとも130種を超える種で観察されており,ヒト胚においても発生休止の可能性が示唆されている.発生休止と一括りに言っても,種によって発生休止の様式は多様であることが近年わかりつつある.
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DOI:10.18958/7555-00004-0001703-00